【独自】「おかやま愛カード」タクシー割引廃止相次ぐ 免許返納者用サービス、各社負担重く
運転免許証を返納した岡山県内の高齢者(65歳以上)に交付され、協賛店・事業者で割引などのサービスが受けられる「おかやま愛カード」を巡り、県内のタクシー事業者が相次いで割引を廃止することが30日、関係者への取材で分かった。割引にかかる費用は全て店や事業者が負担する仕組みになっており、廃止は新型コロナウイルス禍以降の経営悪化が理由。割引サービスを行う車両は約2200台から約1100台に半減するという。 県タクシー協会によると、協賛事業者は運賃を1割引きしている。実施しているのは加盟事業者(約120社)の8割に当たる98社で、30日までに29社が廃止を決め、中国運輸局に申請した。車両の多い下電観光バス(岡山市)や岡山両備タクシー(同)などは11月1日からの廃止をホームページで知らせている。 2023年の県内タクシーの輸送人員はコロナ禍前の19年と比べ3割減、営業収入は2割減。愛カードの割引額は推計で約7800万円に上っている。協会の神宝博専務理事は「事故防止に向けた社会貢献活動として取り組んできたが、事業継続が難しい会社も少なくなく苦渋の決断となった。地域の足確保のため理解をお願いしたい」としている。
割引を巡っては、中国運輸局岡山運輸支局が22年、岡山県や市町村にコロナ禍の需要減少や燃料費高騰を受けながらも運賃を割引する事業者に対し、国の地方創生臨時交付金を活用した事業継続支援を働きかける一方、タクシー協会は同年以降に計3回、県などに支援を要請していた。 愛カードは09年11月から県警が発行。9万8945人(9月末時点)に交付した。飲食店など2600余りが協賛しており、タクシー以外でサービス廃止が相次ぐ動きはないという。県警交通企画課は「運転免許証を返納した人にとってタクシーは貴重な交通手段。廃止の動きに危機感を抱いており、対策を考えていきたい」としている。