SF・ホラー・心理学…広がる韓国文学の世界 書店員オススメの5冊
作家ハン・ガンさんのノーベル文学賞受賞で再び注目を集めた韓国文学。フェミニズムや現代史をテーマにした小説以外にも、意外なジャンルの作品が次々に翻訳されています。11月23・24日に東京・神保町で開かれる韓国文学のお祭り「K-BOOKフェスティバル」と、全国の書店で開かれる「K-BOOKフェア」を前に、参加する書店の店員たちが、SFやホラー、ハードボイルドなど韓国文学ならではの5冊を紹介します。
わたしたちが光の速さで進めないなら
私たちの未来をひらく、手をさしだす物語 ここから遠い世界を描いているのに、ここには私たちのための物語がある。 ある村で成年になった者たちが春に始まりの地と呼ばれる場所に向かって巡礼する。一年後に戻ってくるとき、必ず人数は減るという謎が明かされる「巡礼者たちは帰らない」や、遭難したどり着いた星で地球外生命体に助けられ共に暮らした女性の物語「スペクトラム」。死者のマインドが記録、保管される図書館を描いた「館内紛失」などの魅力的な7編の小説たち。そのどれもが“普通”とは違うことで社会や世界と擦れてしまい、ままならなさを抱える人たちが、それでも自らの生を大切に守る姿を、希望の兆す瞬間を、物語はやわらかく受け止めている。この世に完璧なものなんてない。都合のよい世界は存在しない。それでも。痛みを引き受けながら、よりよい世界をたぐり寄せるために、諦めないという覚悟が芯にある。私の外側へ、未来へとひらかれていく思いのする、たおやかな小説集。(toi books・磯上竜也)
破果
殺し屋だって歳を取るし、心もある。韓国発の身に迫るノアール小説。 この小説、面白い!、これに尽きます。 「殺し屋」生活45年の女性が主人公のノアール小説。凄腕のエージェントだった主人公も65歳になり老いを感じ日々万全な状態ではなくとも任務に勤しむ。 ノーベル文学賞で話題になっている韓国文学の懐の広さを感じられます。 個性的なキャラクター、過去と現在の因果、韓国の歴史的な背景、いろいろてんこ盛りで、ラストまでいい緊張感をもっているので、分厚いですが、一気に読めてしまいます。 「老いと仕事」がテーマでもあるので、10代、20代、30代……と節目に読んでみると、読み心地は変わるはず。筆者はもうすぐ40歳なので、10年後にもう一度読むのが楽しみです。 もうすぐにでも映画化して欲しい(そういう噂もある)!。 あと、続編というか若き日の主人公を描いた『破砕』も面白いので、合わせて読んでください。(双子のライオン堂・竹田信弥)