「マイナス金利政策解除」決定も 金利を上げて引き締めに進むのは「微妙な状況」
ジャーナリストの佐々木俊尚が3月20日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。日銀が決定したマイナス金利政策の解除について解説した。
日銀がマイナス金利政策の解除決定、利上げは17年ぶり
日本銀行は3月19日の金融政策決定会合で、賃金と物価がそろって上がる好循環の実現が見込めると確認し、大規模な金融緩和策の柱であるマイナス金利政策の解除を決めた。政策金利の引き上げは平成19年以来、17年ぶりとなる。 飯田)マイナス金利の解除が決定しました。短期金利、政策金利は0~0.1%程度に誘導し、ゼロ金利政策に移行されます。
「マイナス金利の解除」は手段であり、最大の目標ではない
佐々木)どの新聞も1面トップが「マイナス金利解除」です。「金融正常化へ」という内容の記事もありますが、「金融正常化」とは何なのでしょうか。 飯田)いままではずっと異常だったのか。 佐々木)目標はマイナス金利解除ではなく、経済を軌道に乗せることであり、その上できちんと分配も行われるような状態に持っていくことが大事なわけです。「マイナス金利解除」が最大の目標ではありません。 飯田)手段に過ぎないはずですよね。
「金融緩和がなくなったわけではない」というマーケットの判断から円安が進行
佐々木)どうも手段と目的が入れ替わっている感じがする。実際、これだけ大騒ぎしている割には、なぜか円安が進行しているのです。 飯田)足元では1ドル=150円85銭前後(3月20日現在)での取り引きです。マイナス金利解除の理由として、「円安が進んで物価が上がっているから」だと言われていますが。 佐々木)そう言っていた割には何なのでしょうか。日銀の植田総裁は、「大規模な金融緩和の環境自体は続く」と言っています。マイナス金利がゼロ金利になっただけであって、せいぜいプラス0.1ポイントぐらいだから、決して金融緩和自体をやめたわけではない。だからマーケットは「金融緩和がなくなったわけではないのか」と判断したようです。
経済や企業経営への影響は限定的
佐々木)全国銀行協会(全銀協)の加藤勝彦会長(みずほ銀行頭取)は、会見で「急速な利上げは想定されず、当面は緩和的な金融環境が継続すると考えられることから、経済や企業経営への影響は限定的と見込んでいる」と言っています。銀行の普通預金の金利についても「マイナス金利が解除されても大きな動きは想定しづらい」と述べており、全銀協が「ほとんど影響はない」と言っているのです。 飯田)ほとんど影響がない。 佐々木)これだけ大騒ぎしている割には、日銀の金融緩和政策もあまり変わらないし、今後も大きな影響は見込まれない。新聞を見ると「金利のある世界がやってくる。これから住宅ローンがどんどん上がり、預金も増えていく」などと言っているけれど、そう簡単にはいかないと思います。 飯田)短期金利の部分は、直接的には変動型の住宅ローンに効いてくる。 佐々木)長い目で見ると金利が上がるので、少し負担が増えることは間違いないと思いますが。 飯田)その分、もしこのままインフレ状況が続けば、実質的な金利はインフレが進む分だけ上がるということです。