『ONE DAY』正攻法で描かれた潔い最終話 天樹勇太と梅雨美が5年ぶりの再会を果たす
密輸取引の現場でミズキ(中川大志)から銃を向けられた誠司(二宮和也)。その現場を生中継しようと動いていた桔梗(中谷美紀)は、渋滞にはまり、かつ取引現場が変更となったことで行き場を失ってしまう。しかも横浜テレビではすでに局をあげての音楽特番を中断した事件報道が始まっており、キャスターとして座る査子(福本莉子)にも焦りの色が見え始める。そしてクリスマスディナーの営業を始めた葵亭では、時生(大沢たかお)が“愛情のこもったスペシャルメニュー”と自信をのぞかせるメインディッシュの準備が着々と進行していた。 【写真】葵亭に向かう天樹勇太(二宮和也) 実際のクリスマスを待たずして、12月18日に最終話を迎えた『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~』(フジテレビ系)。ドラマの開始当初から言われていた通り、主人公たち3人に“ほんのちょっとの奇跡”が起こる聖夜となれば、ここにきて何かが大きくひっくり返るような出来事はもう起こらない。穿った見方をしていれば拍子抜けするような展開かもしれないが、過剰な引き伸ばしやフラグ立てをしないあたりは正攻法であり、潔くもある。少なくとも、この最終話に至るまで複雑に絡み合っていた警察とアネモネの関係図が、収まるべきところに収まったことの安心感だけで充分である。 誠司を逃したカレン(松本若菜)を切り捨てたり、“警察官・天樹勇太”としての記録を抹消して一ノ瀬(遠山俊也)の側で誠司を追い込むような素振りを見せていた蜜谷(江口洋介)。あくまでもそれは、アネモネと内通していた一ノ瀬を陥れるための策であったとわかる。しっかりとカレンに手柄を取らせ、誠司には警察官に復帰するチャンスを与える。とはいえ当の誠司、もとい天樹勇太はそれを断り、5年間待たせていた梅雨美(桜井ユキ)の元へと向かうのだ。 第1話の序盤で、まさに時生がデミグラスソースをひっくり返す一連以来となる、勇太の葵亭への来店。数話前に突然記憶が回復して、もしや記憶喪失のふりをしていただけなのではないかと勘繰ってしまったわけだが、今回の梅雨美との再会を見れば、第1話での行動が、記憶を失った誠司(勇太)が半ば本能的に梅雨美に会いに行こうとして葵亭にたどり着いたのだと解釈することができる。そう捉えたほうが存分にロマンティックではないか。 それにしても、この勇太のクライマックス然り、大スクープを得たことで打ち切りになったニュース番組の継続を提案されて断る桔梗も然り、ディナー客たちの前で葵亭の新たな船出を告げる時生も然り。聖夜の鐘が鳴るということはすなわち、新たなスタートを示すもので(さながらジョン・レノンとオノ・ヨーコの名曲「Happy Xmas(War is Over)」のような希望の象徴ともいえる)、そういった意味では25日を飛ばしてエピローグで2024年の様子が描かれたことも充分に納得がいく(欲を言えば特別編のようなかたちで25日の物語を見てみたかった気もするが)。 ちなみに前回の第10話が20時6分で幕を閉じたので、この最終話はエピローグ部分を除いて3時間54分物語が進んだことになる。1日の物語を全11話で描くというのがこのドラマのコンセプトであり、最も進度が速かったのは第1話の約8時間(前日の23時30分から7時30分ごろまで)。最も遅かったのはちょうど中間の第6話の53分間(13時26分~14時19分)。導入とフィナーレにスピード感を持たせ、中盤はより高密度になることをねらった構成であろう。純粋にドラマとしての“見やすさ”で言えばスピード感のある方、この最終話ぐらいの進度が心地よい。
久保田和馬