キム・カーダシアンの“乳首ブラ”はなぜ炎上? 「乳首の扱い」を考える
乳首が見えるのは恥ずかしいこと?
私個人(著者)の意見としては、このブラは最高だと思います。よくあるベージュのプッシュアップブラや下着のラインを隠すショーツなど、自然な体の形を隠すことが一般的になっていることを疑問に思っていました。そしてときには、自分の乳首の形が透けて見えるのは恥ずかしいとも同時に感じていました。 社会のプレッシャーから女性の多くは自分の体形や体の一部を“隠さなければ”と思わされることも多いなか、男性以外の乳首は特に性的な目でみられるほか、“みだらなもの”としても扱われてしまいます。 そんな中で乳首風の突起のついたブラは社会のプレッシャーに反抗するものとも捉えられるし、その社会的なメッセージに私は共感できます。
「ニップル・ブラ」は70年代から存在
実は、このようなブラのデザインを発表したのはキムが初めてではありません。「ニップル・ブラ」は1970年代から存在していて、ブラの上からつけるつけ乳首(乳首風の突起)もすでに多く売られています。 乳がんの治療を含む手術を経験した人が主ですが、ほかにもその見た目が好きな人などのために作られているそう。そして現在は乳がん患者のコミュニティからドラァグのアーティストまで、幅広い人に使われているという背景があります。 ドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』のサマンサ・ジョーンズがバーで男性を誘うためにシリコン製の乳首をつけ「乳首は今、トレンドなの。雑誌を見てみなよ」と言ったシーンは忘れられません。 しかしキムのこの製品は今までにない規模で、大きな話題になりました。乳首は“ふつう”で、無害なただの体の一部なのに、乳首の形が見えている状態で街中を心地よく歩くことはできないのだという現実を突きつけられます。 「胸」は性的なものとされていて、乳首の形が見えていることは不適切で、社会的にふさわしくないとされています。たとえその乳首をもつ人が、ただ社会のそうした期待に応えるためだけに“ブラジャーをあえて着用している”のだとしても。 だからこそキムのこの新製品は、長きにわたって他者によってコントロールされ、“検閲”されてきた体の一部をふつうにしていくだけでなく、祝うような未来への第一歩だと私は思います。