名古屋マンション建設反対運動で逮捕、無罪確定の男性が提訴
保有、利用されない自由
判決後の報告集会で奥田さんは「刑事事件の第1回公判から8年後にこんな結果が出るとは、本当にうれしい」と涙を交じえ支援者に挨拶。「県と国の国賠(国家賠償)が認められなかったことには不満はある」としながらも、現場監督の証言が「虚偽」と判断されたことに「本当に(事件が)『でっちあげ』だったんだということを、明日の新聞報道ではよろしくお願いしたい」と念を押した。 弁護団の中谷雄二弁護士は「国民は公権力からDNA型等のデータをみだりに取得されない自由だけでなく、みだりに保有、利用されない自由を有すると認められる」とした判断を評価。「DNAや指紋、顔写真について公権力からみだりに取得されない権利は今までの最高裁判決も認めていたが、保有され続けない権利まであるということに踏み込んだ。そのうえ、国民の権利が制限される時には単なる内部規則だけでいいというのが国側の主張だったが、そうじゃない、憲法を反映して法律できちんとルール化されるべきというところに踏み込んだ、かなり価値のある判決だ」と述べた。 長谷川裁判長は「本件の捜査にDNA型鑑定資料の採取の必要があるとは考えられない」と指摘。捜査機関がデータを保有、利用することにより「国民個々人の私生活の平穏が害されたり、行動が制限され、萎縮させられたりする効果は具体的、現実的なもの」と、その危険性にも言及した。 筆者の取材に警察庁刑事局は「判決内容を精査し、関係機関と協議しながら対応を検討している」、日本建設は「お答えすることができない」とコメントした。 マンションは無罪判決直後の18年3月に完成。建設を巡っては、業者が防犯カメラ10台を設置したのは肖像権やプライバシー権などの侵害だとして住民が提訴。ダミーカメラ1台が「嫌がらせ的な意図で設置したのではないかと疑われる」として日本建設などに計5万円の支払いを命じる名古屋地裁判決(19年9月5日)が確定した。
井澤宏明・ジャーナリスト