名古屋マンション建設反対運動で逮捕、無罪確定の男性が提訴
高層マンション建設の反対運動中に身に覚えのない暴行容疑で逮捕され、刑事裁判で無罪が確定した名古屋市瑞穂区の薬局経営、奥田恭正さん(68歳)が捜査中に採取され警察庁が保管するDNA型と指紋、顔写真データの抹消などを求めた裁判の控訴審判決が8月30日、名古屋高裁であった。長谷川恭弘裁判長はデータ抹消を命じた一審の名古屋地裁判決(2022年1月18日※)を支持し、無罪確定後のデータ保管継続に「正当性はなく、憲法13条に基づく原告の人格権を侵害していることは明らか」「無罪とされたのにもかかわらず、一般国民とは異なり、原告のデータが捜査機関に保管されていることは法の下の平等(憲法14条1項)にも反する」と違憲性を指摘。国の控訴を棄却した。
さらに、データが国家公安委員会規則などで運用されている現状を厳しく批判し、「広く国民的議論を経た上での憲法の趣旨に沿った立法的な制度設計が望まれる」と踏み込んだ判断を示した。 また、逮捕の決め手となる証言をした現場監督について「虚偽の被害を偽装し、虚偽の被害申告及び供述するなどした一連の行為は、原告を罪に陥れようとする極めて悪質な故意による不法行為で、原告が被った精神的苦痛は甚大だったと認められる」として一審判決を変更。現場監督と雇用した日本建設(大阪市)に慰謝料など計220万円の支払いを命じた。 一方、違法な逮捕や起訴などによって精神的苦痛を被ったとして国や愛知県に求めた損害賠償は「(逮捕や勾留請求、起訴は)杜撰なものだったといえるものの、国家賠償法上違法とまでは認められない」として一審同様棄却した。 奥田さんは16年10月7日、自宅南の高層マンション工事現場前で反対運動中、現場監督を突き飛ばし、ダンプカーに背中を接触させたとして愛知県警に暴行容疑で逮捕された。名古屋地検が暴行罪で起訴したが、名古屋地裁は18年2月13日に無罪判決を出し、同地検は控訴せず無罪が確定した。