【西武投手王国への道】極端な得点力不足により負のサイクルに陥った投手陣「アブレイユがホールドを何個記録しているのか。異常な数字です」(豊田コーチ)
パ・リーグ最下位に終わったが、西武の最大のストロングポイントである投手陣。近年、急速に力をつけてきたが、その裏には一体、何が隠されているのか。ライオンズ投手王国への道を追う――。 取材・文=中島大輔 写真=兼村竜介 【選手データ】アルバート・アブレイユ プロフィール・通算成績
極端に援護率が低かった高橋光成
49勝91敗3分けで勝率.350。今季の西武は開幕直後から歴史的低迷に苦しみ、5位・オリックスに14ゲーム差、優勝したソフトバンクに42ゲーム差をつけられて最下位に沈んだ。 最たる敗因はチーム打率.212、350得点といずれも12球団最低に終わった打線だ。同トップのソフトバンクの607得点と比べると西武の貧打が浮き彫りになる。 一方、開幕前から評価の高かった投手陣だが、単純にチーム防御率を見ると2023年の2.93(リーグ2位)から今季は3.02(リーグ4位)に下降。打線の援護がなかなか期待できない状況が続いたが、その影響は投手陣にどの程度及んだのか。 「去年も一昨年も『打てないから』という考えは削除しようと投手陣のミーティングで話してきました」 22年から投手陣の運用を担う豊田清コーチはそう語った。だが、見えない重圧は確かにあったという。 「過去2年に比べ、今年は『先に点をやってはいけない』というプレッシャーがだいぶあったと思います」 主力投手の援護率(9回あたりで味方が挙げた得点)を見ると、苦しい投球を強いられたのは一目瞭然だ。 ◎高橋光成:1.13 ◎渡邉勇太朗:1.78 ◎平良海馬:1.91 ◎武内夏暉:2.61 ◎隅田知一郎:2.78 ◎今井達也:3.53 ◎松本航:3.68 特に援護に恵まれず、勝利の女神に見放されたのが0勝11敗、防御率3.87の高橋だ。21年から3年連続2ケタ勝利を飾った右腕はシーズンオフに体重を7kg増やして球速増を目指したが、春季キャンプ中に右肩の張りで出遅れる。今季初登板の4月14日のソフトバンク戦(ベルーナ)では左翼フランチー・コルデロの拙守に足を引っ張られて降板すると、波に乗れないまま1年を終えた。 前年までと比べ、今季の高橋が速球も変化球も制球できずにいたのは確かだ。ただし、打線の援護など何か一つ運に恵まれていれば、ここまでの低迷は免れたのではないか。 「内実は僕らも分かっています。負けがついても防御率やWHIP(投球回あたり与四球・被安打数合計)が良ければ投手は割り切れるけど、額面上の数字も良くなく、うまく乗り切れないところがありました」 豊田コーチはそう話すと、同時にチーム状況について言及した。 「早めに一度ファームに行かせれば良かったのでしょうけど、試行錯誤している中でこちらも使い続けた。(4月末の)平良のケガや與座(與座海人)の不調もあり、光成には健康であるなら投げてほしかった……」