瀧本美織、医療×変わり者はハマり役 『となりのナースエイド』の“天才”演技の面白さ
澪(川栄李奈)が自分が自殺に追い込んだと思っていた姉・唯(成海璃子)は他殺だったかもしれない。しかもおそらくその真相を知る犯人が先日、澪の部屋に侵入し、唯のものと間違えて澪のノートパソコンを盗んでいる。毎週水曜日に放送中の『となりのナースエイド』(日本テレビ系)では、次々と新たな事実が判明。「澪も狙われるのでは?」と不安になっていた矢先、病院内で彼女をつけ回すような人物の存在が描かれた。その人物こそ、アメリカ留学から帰国した統合外科医の火神玲香(瀧本美織)だ。 【写真】左の髪をサラッとする火神玲香(瀧本美織) 玲香が初登場した第4話のタイトルが「新たなクセ強キャラ現る!」なのだからその“クセ強さ”は折り紙付きといっていいだろう。澪をなぜか手術室に呼び出したかと思えば、その中でスラリとした足を組み、手術台に鎮座して待っていた玲香。澪を試すような物言いは彼女を目の敵にしているようにも見えるが、猿田(小手伸也)と違って“小物感”はない。玲香は大河(高杉真宙)に次ぐ実力を持つ外科医とされているが、その力に見合った圧倒的な存在感も持ち合わせているのだ。そんな雰囲気を全面に出しても負けない華やかさと強さが玲香を演じている瀧本美織にはある。 その一方で、玲香には変わり者な一面も。かつて玲香は自分を超える技術を持った大河に一目惚れ。普通ならば、少しずつ距離を詰めて、相手を意識させて……などという段階を踏んでいくのだろうが、玲香は好きと自覚したら即行動、よりさらに早く秒で行動。あろうことか病院内の渡り廊下で「私、火神玲香は、あなたが好きです!」と叫んだのだ。それは、澪の同僚ナースエイド・夏芽(住吉)の言葉を借りれば「ドラマでも最近見ないような恥ずかしい告白」だったのだが、現実はドラマのようにうまくは行かず、その場で玉砕。さらにそのショックで玲香は人目もはばからず、声をあげて泣き始めてしまったのだ。どうやら、自信家だったばっかりに、自分が振られるとは思っていなかったようなのだ。 部屋を好きなもので埋め尽くしすぎて汚部屋と紙一重の大河然り、この玲香然り、天才はなんだか変なところがポンコツで、それが憎めないところになっているようだ。 瀧本の華やかでありながら凛とした面持ちは知性を、ハキハキとした口調は説得力を感じさせる。それが本作や内科医・高森麻里亜を演じた『ドクターホワイト』(2022年/カンテレ・フジテレビ系)のような医療ドラマではよく生かされているのだ。冒頭の場面で玲香は、大河と怪しい関係にある澪をストーカーしていたわけではなく、彼女のナースエイドとしての働きぶりを観察していた。そして澪がナースエイドとしての仕事を研究し、誰よりも真剣に取り組んでいることを見抜いていたのだ。「患者を救うためなら医者であろうが、ナースエイドであろうが思ったことを提言する。私は間違っているとは思いません」という玲香の言葉は、玲香自身の医者としてのスタンスをよく表しており、玲香の眼差しには強い情熱が感じられた。 さらに瀧本の素晴らしいところは、激ヤバなキャラクターでも難なく自在に演技できるところ。仲良しの姉妹の裏の顔がある恋をきっかけに明らかになっていくドラマ『Sister』(2022年/読売テレビ・日本テレビ系)で瀧本は、妹の凪沙(山本舞香)に対して狂気的とも思える敵意を抱いた姉・沙帆を熱演。この姉妹は表向きは仲が良いことになっているため、沙帆は凪沙を殺しかねない目線で見つめた後、即座にキラキラした笑顔を見せることもできた。玲香はここまでではないだろうが、少なくとも“激ヤバキャラ”のエッセンスは含まれていることはわかる。それが玲香のキャラクターをより魅力的なものにしているだけではなく、ストーリー全体のいいスパイスとなっているのではないだろうか。 ここへきて、唯を蝕んだ魔病・シムネスに対抗できるオペレーションシステム「オームス」が登場。大河や玲香はそれがどんなものかを理解しており、“適応できる人材”の候補であるようだ。澪は元は優秀な外科医のひとり。もしかしたら澪も、この「オームス」をめぐる何かに巻き込まれていくのかもしれない。玲香は大河との恋だけではなく、今後の展開にも大きな役割を果たしていきそうだ。
久保田ひかる