大谷翔平の対戦投手を徹底分析 三十路先発陣のカージナルス、因縁のジャイアンツ、今永昇太らカブス先発陣とは初対決
【注目すべきカージナルス・ブルペン陣との再戦】 しかしながら攻撃陣は、昨季は719得点で30球団中19位。守備力もOAA(Out Above Average/平均的な野手よりどれだけ多くアウトを奪ったか)が「-7」で19位。好守のラーズ・ヌートバー外野手も左脇腹を痛め開幕戦に間に合わない。ブルペンの防御率も昨季は4.47で23位だった。そのブルペンだが、大谷との再戦で興味深い投手が2人いる。 まずはセットアッパーのジョバンニ・ガエゴス(32歳)。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)メキシコ代表のクローザーだ。WBC準決勝対侍ジャパン。1点リードの9回に登場、先頭の大谷に88マイル(141km)、外角高めのボールになるチェンジアップを右中間二塁打とされ、吉田正尚(ボストン・レッドソックス)に四球の後、村上宗隆(ヤクルト)の中越え2点二塁打でサヨナラ負けを喫した。「大谷にボール球を二塁打されたのが痛かった。あれで流れを持っていかれた」と悔しがる。それから1カ月半後、5月3日の公式戦で再戦となったが、大谷に95マイル(152km)の外角直球を叩かれ、左中間への二塁打を許している。ガエゴスは今度こそとリベンジを期してくるだろう。 もうひとりはアンドルー・キトレッジ(34歳)。1度しか対戦していないが、それがフロリダ州タンパにあるドーム球場「トロピカーナフィールド」の歴史に残る一発となった。 2021年6月25日、先発したキトレッジは、先頭打者の大谷に3球目のチェンジアップをとらえられた。右翼への当たりは観客の座るスタンドをはるかに超え、キャットウォークと呼ばれる照明などを設置する通路に着弾、ドーム中が唖然となっている。
【強力先発陣擁する因縁の相手・ジャイアンツ】 4月1日から3日は、ドジャースの宿敵で世界一8度のサンフランシスコ・ジャイアンツと3連戦を戦う(ドジャースは世界一7度)。ジャイアンツはオフに大谷翔平も山本由伸も獲得に動き、ファイナリストに残ったが、結局はふたりにふられた。しかしその後、「プランB」で補強を続け、なんと総額4億ドル(約600億円)の巨額投資をした。行き当たりばったりではあるけれど、これだけ費やしたからには即、結果を出すことを求められる。地区優勝争いではドジャースに食い下がり、悪くてもワイルドカード枠でポストシーズンに勝ち進まねばならない。 ドジャースとのシリーズ第1戦に出てくるのはローテーション4番手のジョーダン・ヒックス(27歳)だ。103マイル(165km)のシンカーが武器のリリーバーだったが、先発投手に転向することを希望し、ジャイアンツが4年総額4400万ドル(約66億円)でチャンスを与えた。球種はシンカーとスイーパーに加えて、昨季全投球の1.6%しか投げなかったスプリッターを練習中だ。果たしてコンバートはうまくいくのか? 課題はコントロールと長いイニングを投げるスタミナだが、オープン戦は4試合12イニングを投げ18奪三振7与四球、WHIP(投球回あたりの与四球・被安打数合計)は1.42で良くはない。三振が多いのは素晴らしいが、四球も多い。「今は90%の力で投げるようにしている」と言うヒックス。大谷とはカージナルスにいた昨季1度だけ対戦しており、外角高めの100マイル(160km)のシンカーで二ゴロに討ち取っている。 第2戦は5番手のキートン・ウィン(26歳)。昨季6月にメジャーデビュー、9試合に登板し5試合に先発、防御率4.68だった。半分以上がスプリッターという珍しい投手だ。大谷とはまだ対戦したことがない。 第3戦はエースのローガン・ウェブ(27歳)。2023年はリーグ最多の216イニングを投げ、11勝13敗、防御率3.25で、サイ・ヤング賞投票で2位になった。9回あたりの四球数は1.3個とリーグで最も少なかった。ゴロを打たせる投手で、全投球の41%を占めるチェンジアップはメジャーの平均より6.3インチ(16cm)も大きく落ち、平均の打球角度はマイナス5度である。33%のシンカーも平均より6インチ(15.2cm)余分に沈み、被打球角度はプラス1度。ゆえにホームラン王の大谷でさえウェブから飛球は打てない。 昨季は大谷と8月7日に対戦。第1打席は外角のチェンジアップを打ち、ゴロで抜けて行く中前打、2打席目はチェンジアップを一ゴロ、3打席目は89マイル(142km)の外角低めのチェンジアップを手を伸ばしてとらえ、痛烈なゴロがセンター右へ。快足を飛ばして二塁打にした。 ウェブは2014年のドラフト4巡。元はフォーシームが武器の投手だったが、2019年に腕を下げてシンカーが武器の投手になった。テンポよく打たせていくから長いイニングを投げられる。昨季も20試合で6イニング以上を投げた。 このウェブと対照的なのが左腕のブレイク・スネル(31歳)だ。2023年のナ・リーグ、サイ・ヤング賞投手でオフに大型契約を目指したがかなわず、3月下旬に2年契約で妥協した。98マイル(157km)のフォーシームと縦に割れるカーブが主な武器で、バットに当てさせない投球スタイル。MLB公式サイトでは、カーブの空振り時のバットの芯とボールの隔たりは平均10.4インチ(26.4cm)で、メジャーで最も大きいと紹介している。昨季の234奪三振のうち109個がカーブだった。一方で四球も多く、99与四球はリーグワースト。1959年のアーリー・ウィン以来という四球王でサイ・ヤング賞に輝いている。 スネルと大谷の過去の対戦も8打席で半分が四球、4打数2安打4四球だ。去年は7月3日に対戦。第1打席は1ボール2ストライクと追い込みながら四球、2打席目は97マイル(155km)の外角直球で遊ゴロ、3打席目はストレートの四球だった。この試合でスネルは大谷を歩かせたが、5回無失点でマウンドを降り、勝ち投手になっている。