突然の別れから14年、巨人・坂本勇人が大先輩・木村拓也さんに捧げるV打
◆JERA セ・リーグ 巨人3―0DeNA(7日・東京ドーム) 勝利への執念が上回った。0―0の初回2死二、三塁。巨人・坂本勇人内野手(35)は3球目の外角低めに沈むスライダーに泳がされながらも、最後は左手一本ですくい上げた。先制2点適時打が左前に弾み「先制点が取れて素直にうれしいです」と一塁ベース上からベンチへ笑顔で右手を挙げた。 前夜のミスをひと振りで払しょくした。6日のDeNA戦(東京D)は1点リードの4回1死からオースティンの三塁線への当たりを悪送球。昨年9月に三塁へ転向して計29試合目で初の失策が絡んで2点を失い、逆転を許した。「練習するしかない」と一夜明け、試合前のフリー打撃中に三塁の定位置で黙々と打球をさばく姿があった。阿部監督は「ミスしてもね、必死に取り返そうとしている姿を見ているので。さすがだなと思いながら見ていたし、若い選手が何かを感じてほしい」と最敬礼した。 巻き返しを期した7日は、くも膜下出血で2010年に急逝した木村拓也さんの命日。遊撃に定着した08年から二遊間を組み、木村さんがコーチに就任した10年の春季キャンプは居残りでノックを打ってもらった。「本当にいろいろなことを教えてもらいました」という恩人に白星を届けるためにも、負けられなかった。プレーボール前の円陣で中心に立ち、声を張り上げた。 「気持ちだけで結果が出ないことも多々ある世界ですけど、気持ちがない選手はこの世界で長くプレーできないと思う。若い選手も、ベテランもまたそういう気持ちを思い出して。1年間同じ方向を向いて、今日から仕切り直していきましょう」 暗雲を断ち切り、木村さんに届けた今季初のV打。東京Dでの通算打点を466に伸ばし、田中幸雄(元日本ハム)を抜いて歴代単独3位に浮上した。巨人をけん引し続けてきた男はとどまることなく、高みへ突き進む。 (内田 拓希)
報知新聞社