東京の「おにぎり専門店」に並ぶ外国人旅行客を英紙が取材してみたら…
日本でおにぎり専門店が人気を博すなか、欧州やオーストラリアにも「おにぎりブーム」が到来しているという。日本人にも負けない外国人の「おにぎり愛」を英紙が取材した。 【画像】東京の「おにぎり専門店」に並ぶ外国人旅行客を英紙が取材してみたら…
本場の味を求めて東京へ
まだ午前10時前だというのに、「おにぎり ぼんご」の外には長い行列ができていた。先頭の30人ほどはスツールに座り、お茶を飲みながらラミネート加工されたメニューをじっくり見ている。その後ろに並んでいる人たちは立ったままだ。 「いつもこんな感じです」と、東京・大塚でこの小さなおにぎり専門店を50年近く営んできた店主の右近由美子(72)は言う。 1960年に右近の夫が創業した「ぼんご」は現在、1日に最高で約1500個のおにぎりを売り上げる。客は地元の常連をはじめ、日本全国から訪れる好奇心旺盛なグルメたち、そして近年増えているのが、世界的なおにぎりブームに乗って本場の味を求めてやってくる海外からの観光客だ。 「ぼんご」といえば、外の行列と同じぐらい有名なのが、57種類もの豊富な具材やトッピングの数だ。定番の筋子や梅干しから、ベーコンやチーズなどおにぎりとしては珍しいものまである。 右近はこう話す。 「最長で8時間待たれたお客様がいらっしゃいました。おにぎりはお米、塩、海苔、具材というごくシンプルな素材を使って、誰でも簡単に作ることができるもの。そんなシンプルな食べ物で誰かを笑顔にできるのは、とても特別なことだと思います」
海外へのコメ輸出量が増加
日本ではコメの販売量が減少しているが、おにぎりの需要は増加している。業界関係者はその理由について、コロナ禍で食習慣が変化したことで、人々が「職人が作った」こだわりのおにぎりを持ち帰って食べるようになったのが一因だと分析する。 長年、フィルムで包まれた三角形や丸型のおにぎりは、日本全国に展開されるコンビニエンスストアの主力商品であり、安価で腹持ちのよい食べ物として働く人々の強い味方となってきた。 そんなコンビニも、昨今のおにぎりブームに乗って次々と新商品を開発している。ファミリーマートでは、名店とコラボした「ごちむすび」シリーズを発売。いぶりがっこ入りの一本釣りの近海まぐろのツナや、銀鮭のムニエル風とタルタルソースのおにぎりなどが揃う。セブンイレブンでは年間約20億個を売り上げるという。 そしていま、このおにぎりという素朴な料理は、英国、ドイツ、オーストラリア、米国など海外でも人気を博すようになっている。それは日本のコメ輸出量にも反映されており、農林水産省によれば、輸出量は2014年の4516トンから2022年には2万8928トンに増えている。
フランス人の「おにぎり愛」
シドニーのサリー・ヒルズにあるジャパニーズカフェ「Parami」のオーナーのカザト・ミカは、オーストラリア人のおにぎりへの強い関心に驚かされたと言い、「まったく予想もしていませんでした」と話す。 2022年当初、カザトとスタッフが1日に作っていたおにぎりの数は50個だったが、いまや500個にまで増加。おにぎりとコーヒーや抹茶を求めて、連日客が押し寄せる。そのうちの一人、ジョージは「すごくおいしいし、軽食として量がちょうどいいね」と言う。
Justin McCurry