青森・県南地域で生体腎移植再開 八戸市民病院、19年ぶり 外来新設、相談呼びかけ
八戸市立市民病院(水野豊院長)は7月、血縁者や配偶者の腎臓の一つを末期腎不全の患者に移植する「生体腎移植」を同病院で19年ぶりに実施した。専門医不足などから2005年を最後に中断していたが、青森県内で唯一同移植を実施している弘前大学医学部付属病院の協力により、再開にこぎ着けた。11月13日には「移植外科外来」を新設。担当医は「県南地域の患者に、新たな治療の選択肢として勧めたい」と気軽な相談を呼びかけている。 八戸市民病院は1980年に1例目の生体腎移植を実施し、昨年までに生体腎11例、献腎(心臓死後または脳死下)9例の移植を手がけた。しかし、生体腎移植の際に応援を受けていた県外の病院での移植件数増加で、合同での手術が難しくなり、05年に中断。その後、新しい手術方法への対応が進まず、人手不足もあり再開できないまま時間が過ぎた。 再開の動きは、生体腎移植件数が年々増加している弘大病院からの働きかけで始まった。昨年8月、市民病院内に西村隆一消化器外科部長(46)を中心に外科医や看護師、薬剤師、臨床検査技師、臨床工学技士ら十数人で構成する委員会を発足させ、手順書の整備や弘大病院の外来の視察、移植手術見学などを行い準備を進めてきた。 7月に生体腎移植を受けたのは県南在住の40代男性で、ドナーは60代の母親。当初は弘大病院で手術を受ける予定だった。手術は無事終了し、母親は4日後に、男性は約3週間後に退院した。男性は移植前、仕事の合間に週3回の透析治療を受け、食事や水分制限で心身の負担が大きかったが、退院後は腎機能が回復し、職場復帰を果たした。「地元で手術を受けられて良かった」と話したという。 日本臓器移植ネットワークの資料によると、23年末の全国の腎臓移植希望登録者は1万4330人で、実際に移植を受けたのは248人。県内の10月末時点の移植希望登録者は112人となっている。 西村医師は「生体腎移植によって患者のQOL(生活の質)が向上するため、現時点で一番理想的な治療法と言える。生体腎移植や八戸で移植手術が受けられることを広く周知したい」と語った。移植外科外来の診療受け付けは毎週木曜の午前8時15分~午後5時。