東京五輪は大丈夫? 屈辱大敗した森保ジャパンが見せた光と影とは
パレスチナとの初戦では2シャドーが徹底マークを受けて苦しめられたが、相手の策をまんまと逆手にとった。シャドーが囮となって中央にスペースを空け、そこへ3バックの左の板倉滉がドリブルで持ち運び、ゴールを決めた。 メンバーを4人入れ替えたタイ戦では終始押し込んだ。決勝ゴールは90分、井上潮音のクロスを田川亨介が頭で落として板倉が2試合連続ゴールを決めたが、試合を通して3バックがチャレンジ&カバーを徹底し、無失点に抑えたのも収穫だった。 スタメン全員を変えた北朝鮮戦はコンビネーションから左サイドを綺麗に崩した三好康児の得点を含む3ゴールで3-1と勝利、3戦全勝でグループステージを突破した。「チームコンセプトの共有という意味で、日々のトレーニング、試合を追うごとに理解が深まっていると思っています」と指揮官も手応えを隠さなかった。 しかし、グループステージで確立しつつあったものが、ウズベキスタンには通用しなかった。 大量失点を喫した要因のひとつに、チームの立ち上げ時に陥りやすい問題もあった。 例えば、2失点目。日本のゴールキックからのリスタートの場面。ウズベキスタンの選手に狙われていたにもかかわらず、ゴールキックを大きく蹴らずにショートパスを繋ぎ、まんまと潰されたのだ。 この場面に限らず、日本は後方からショートパスを繋いで相手のプレスをかわすことにこだわっていた。相手を前に出てこさせて裏を突くのが、チームの狙いのひとつだったからだ。しかし、だが、相手に狙われていたのは明らかだから、ロングボールで状況を一気にひっくり返す柔軟な判断を下してもよかった。3バックの左に入った古賀太陽が悔やむ。 「監督からはチャレンジしてほしいと言われていたんですけど、失点してしまったら元も子もないので、自分たちで判断して、ゴールキックを前に蹴るのも必要だった」
ウズベキスタンには、そうした流れを読む力があった。森保監督が指摘する。 「ウズベキスタンは最初そんなにプレッシャーを掛けてこなかったですけれど、我々が慌てていると見ると一気にプレッシャーを掛けてきた。相手の状況、心理的状況を見極めて突いてきたと思います」 技術や判断力を磨き、このレベルのプレスを落ち着いて掻い潜れるようになれるかどうか。あるいは、ロングボールで状況を一気にひっくり返す柔軟な判断が下せるかどうか。 それが、当面の今後のチーム作りにおけるスタンダード、指針のひとつになっていくだろう。その意味で、チーム立ち上げ時におけるこの完敗も、収穫だと言える。 試合翌日、森保監督は、前日の険しい表情とは打って変わって清々しい表情でチームホテルのロビーに現れた。 「現段階の力の差は認めて、次にわれわれがステップアップするために、この悔しい思いは絶対に忘れないように、次からの活動に繋げていかなければならないし、この経験を糧にして選手たちは成長していってほしい」 3月にはパラグアイ遠征が予定されている。そこでは、まだ招集されていない、DF中山雄太、冨安健洋、杉岡大暉、初瀬亮、MF市丸瑞希、FW小川航基、堂安律、久保建英といった昨年5月のU-20ワールドカップの主力組も招集されるはずだ。東京五輪に向けたチーム作りはいよいよ本格化していく。 (文責・飯尾篤史/スポーツライター)