「世界の頭脳100人」に選ばれたオードリー・タンが語った…人々が“協働”する社会にするためにリーダーに求められる「役割」
コロナ禍において国民全員にマスクを配布するシステムをわずか3日で構築し、世界のグローバル思想家100人にも選出された若き天才オードリー・タン。自身もトランスジェンダーであるタン氏が、日本の若者に向けて格差やジェンダー、労働の問題からの「解放」をわかりやすく語る『自由への手紙』(オードリー・タン著)より抜粋してお届けする。 【漫画】刑務官が明かす…死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 『自由への手紙』連載第26回 『「市民に開かれた政治を」…日本では絶対にあり得ない“オープンな政治”を台湾が実行できた秘訣に迫る』より続く
参加型社会においてリーダーに求められる役割とは?
ヒエラルキーが消えた世界では、国とソーシャルセクターとのオープンな協力が重要です。そして一人のリーダーでなく、多くの人の力が不可欠です。 よくメディアで取り上げられる、どこの薬局に行けば確実にマスクが入手できるかを示したマスク在庫管理アプリは、何千という市民エンジニアの力で実現したのであって、決して私の功績ではありません。 私はただ、市民エンジニアたちの仕事の成果を見せるポータル部分のコードを書いただけ。いわば私は、植木鉢をつくるために粘土をくり抜いているだけであって、その鉢に木を植えてくれるのは市民たちなのです。 ヒエラルキーが消滅したインターネットのような参加型社会において、リーダーの役割は、自身の属する組織を最大化することです。
参加型社会における理想のリーダー像とは?
たとえば、私が従事することすべては公的記録として文字に起こされ、あるいはビデオに録画されて公開されます。私が率いるチームPDiSの活動は、すべてインターネット上で全世界に明らかにされているのです。これは文字通りのことで、私が行うウェブ会議にしろ、誰かとの会話にしろ、この本のために受けているインタビューにしろ、すべてがオープンです。 そのためロビー活動をする人は、私に対してロビー活動をするのではなく、全台湾社会に対してロビー活動を展開していることになります。 そうなると、どの活動団体も、自分たちの業界など、小さな利益のためのロビー活動はできなくなります。グローバルな目標や持続可能か否かという観点から陳情にやってくるのは、すべての団体が「常に何もかも見られている」と承知しているからです。 政府の特定部門とコネクションをつくるにもPDiSが土台となるため、自律と秩序をもつ「自己組織型」の団体のほうが有利です。逆に言うと、その場にいない関係者を無視しがちな「密室の陳情」は通用しにくくなります。 私がビデオでこの本のインタビューを受けていること自体、インターネットにおける強制を伴わない統治、ウェブコミュニティの成果を示す証拠なのです。 『約束を破る中国と絶望の中の香港…台湾の若き天才が香港に「恩返し」したいと語るワケ』へ続く
語り)オードリー・タン