Tシャツ1枚321円の中国系“激安”通販「Temu」、アメリカ人1億人が「疑わしい」のにどっぷりハマる理由
● 中国の工場や倉庫から 直接空輸して運ぶ 1.安さの秘密 アマゾンや楽天と、Temuは何が違うのだろうか。アマゾンは注文をすると、アマゾンの日本にある倉庫から運ばれてくることが一般的だ。楽天は日本の各商店からの発送となる。ただし、アマゾンの商品の中には各商店から発送されたりすることもあるし、楽天も楽天の倉庫から発送されることもある。 Temuでは中国の工場・倉庫から直接、日本の消費者の元へ、空輸して運ぶという形をとっている。 この「直接」というところが安さを実現するポイントの一つだ。一般に、海外からモノを輸入する際には、「関税」がかけられる。関税を知らない人はいないと思うが、念のためにかんたんに説明をすると、関税とは、国境を越えて輸入される商品に対して課される税金のことだ。国内産業を保護するなどの目的で課税されている。 そして、日本や米国を含む多くの国で、少額のものについては関税はかからなかったり、非常に低い税率が適用されたりしている。 例えば、クロネコヤマトのホームページを見ると、「通販で購入された個人使用目的の関税額については、16,666円以上で課税対象となります。(為替レートで指定額未満でも課税対象となる場合があります。)/一部例外品もございます」などと書いてある。 つまり、日用品など比較的安価な商品を、中国から直接日本の消費者に届けることによって、関税を免れることができる。さらには、日本に物流倉庫を造る必要がなくなるというメリットが生まれる。これが物流におけるTemuの安さの秘密である。 さらにいえば、最近になって、この輸送にかかるコストを、Temuは加盟店に押し付けたようだ。「Temuは物流費用を販売者が負担する『半委託モデル』を導入したため、予想よりも早く収益性が改善すると見込んでいます」(24年5月23日、モーニングスターレポート)という。 ただ、中国から直接、送られてくるということで、包装がボロボロになっていたというような報告がSNS上でも散見される。中国には日本ほど商品を丁寧に扱うという感覚がないのかもしれない。 ● 期待との落差が 大きくなりがちな商品とは 2.安さの秘密2 もう一つの安さの秘密は、ノンブランドであることだ。Temuのサイトへアクセスし、販売されている商品のリストを見ると、スピーカーからTシャツ、靴下まであらゆる生活用品が並んでいる。ほとんどが中国製で、買い物客はほとんどの商品にブランドがないことに気付くだろう。あったとしても、有名なロゴは付いていない。厳しいインフレ時代の申し子とも呼ぶべきなのだろうか、とにかく安い商品を求める消費者にとっては最適なサイトといえる。 PDDホールディングスの創業者であるコリン・フアン氏は18年のインタビューで、「都市部の富裕層だけでなく、『北京五環路』の外に住む人々、つまり郊外に住む中低所得層にもアピールしたい」と述べた。「とにかく安い」を突き詰めていくということであろう。 インターネット犯罪、節約術やお金の最新情報などに精通するコラムニスト・山野祐介氏は、日本におけるTemuの実態をこう解説する。 「ゲーム機やゲームソフトなどを検索してみると分かりやすいですが、日本で買えるゲーム機やソフトは全く売っておらず、日本の小売店で売っていない周辺機器しか出てきません。つまりこれは『中国の工場から出荷されるような商品しか取り扱っていない』ということ。日本の通販ではメーカーや仕様を見ることである程度の品質を推測できるが、temuの場合はメーカーや仕様などがほとんどわからないので『出たとこ勝負』になりがち。目論見通りにいかないパターンがあることを織り込んで買わないと、期待との落差が大きくなってしまうでしょう」