女川原発2号機が11月ごろに再稼働へ 元従業員が住民避難の課題を指摘
khb東日本放送
東北電力は、女川原発2号機について11月ごろの再稼働を目指しています。東日本大震災の際に女川原発で震災に見舞われた元作業員は、重大事故が起きた際の住民避難に課題が残ると指摘します。
9月27日、JR福島駅に関東から5人の女性が集まりました。東日本大震災から13年半が経過した福島の今を見学するためです。 今野寿美雄さん「行きますよ、帰還困難区域入りますからね」 ガイドを務めるのは、福島県浪江町出身の今野寿美雄さん(60)です。東日本大震災の際、女川原発で作業員として働いていました。 今野さんは、原発事故の実相を知ってもらおうと2013年から定期的に伝承活動を続けています。案内するのは東京電力福島第一原発から約30キロ、帰還困難区域となっているふるさとです。許可がないと、入ることはできません。人の気配はなく、生い茂った木々や野生動物が行く手を遮ります。 見えてきたのは今野さんの実家です。 今野寿美雄さん「ガラス気を付けてくださいね」 野生動物に荒らされた部屋。かつての姿はもうありません。止まったままの時間。 今野寿美雄さん「これが実態です。原発が事故を起こすと、片方ではきらびやかにやれ復興だの何だのって言っているけど、これが実態ですよ」 見学者「想像以上に荒れてて、こんなことになる未来が見えていたら、原発なんて稼働してなかったんだろうなと思います」「時が過ぎれば良くなるっていう道は、こういう所には無いんだなっていうのはすごく感じました」 福島の教訓を次の災害へ。11月ごろの再稼働を目指す女川原発について、今野さんが懸念しているのは重大事故が起きた場合の住民の避難です。 今野寿美雄さん「海に家が流出していって、(女川原子力)発電所見たら発電所の脇のタンクがゴロンとひっくり返っていてこれはえらいこっちゃと思って」 高さ14.8メートルの場所にあった女川原発は、約13メートルの津波に襲われ原子炉建屋の地下が浸水するなどの被害を受けました。外部電源が確保できたため、福島第一原発のような重大事故は免れました。 東北電力は再稼働に向け、防潮堤のかさ上げや電源や冷却機能の確保など対策を進めてきました。しかし、安全対策工事は完了しても自治体が策定した避難計画の実効性に疑問を抱いています。 今野寿美雄さん「自分で経験してね、この避難計画は絵に描いた餅だなって。13年前を忘れたのかって言いたくなっちゃうよね」 福島第一原発事故の後、政府は全国の原発から30キロ圏内の自治体に、避難先や経路を盛り込む避難計画の策定を義務付けました。 避難計画では事故が起きた場合、原発から5キロ圏内の住民はすぐに避難。5キロ以上離れている半島の先端部の地域も同じ扱いです。 一方、5キロから30キロ圏内の住民は、事故直後は屋内で待機し放射性物質の飛散が過ぎてから避難を開始します。 避難するのは約19万人で、その7割に当たる約14万人が宮城県石巻市の住民です。福島第一原発の事故では、内陸に避難する車で渋滞が発生し、同じことが起きてしまう懸念は拭えません。 原発から約10キロ、半島の先端にある石巻市の旧牡鹿町では避難を心配する声が住民からも上がっています。牡鹿半島で自動車修理工場を経営する大澤俊雄さん(73)です。 大澤俊雄さん「ここ(女川原発)何かあって地震だとなったらもうどうしようもないから、どうすればいいのかなと思いながらどうしようもないんだなと思って」 女川原発で事故があった際に避難道の1つとなるのが、牡鹿半島と石巻市中心部を結ぶ県道2号です。片側一車線の一本道で、原発に近付く道を通らざるを得ません。道路の脇にある標識には「津波浸水区間」と書かれています。 大澤俊雄さん「海からの材木から何から泥にいっぱいなって全然通行止めです。この辺りまでずーっと、あっちの上の方まで高さが」 津波浸水想定では、県道2号など避難道路の14カ所が水につかり通行できなくなる恐れがあります。 大澤俊雄さん「避難道路だよって言われてもちょっと納得はいかないんだよね、何かあった場は全然。旧牡鹿町の住民のこと全然考えていないような気がします」 元日に起きた能登半島地震では、半島部特有の脆弱性が浮き彫りになりました。 小笠原侑希記者(1月15日石川県珠洲市)「道路の真ん中の部分に大きなひびが入ってしまっています。そして、奥を見ますとマンホールの部分、大きく隆起してしまっているのが分かります」 内閣府の調査では、志賀原発から半径30キロ以内の避難ルート32カ所で通行止めが発生し少なくとも154人が避難できずに孤立しました。 宮城県は訓練を行うなどして避難計画の実効性を高めていく必要があると話します。拭いきれない避難への不安が解消されないまま、女川原発2号機は11月ごろに再稼働の日を迎えます。
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