月命日に想う亡き父に負けないノリづくり 東日本大震災発生から13年9カ月〈宮城〉
仙台放送
東日本大震災で大切な人を亡くした方に、お話を伺う「月命日に想う」。12月12日は、宮城県東松島市の櫻井健太さんです。亡き父に負けないノリづくりを目指し、海に出ます。 夜明け前の港。冷えた空気の中、沖に出る緊張感と、収穫への期待感が入り交じります。 東松島市大曲浜。皇室献上品としても知られる全国有数のノリの産地は、今、収穫期を迎えています。 父から継いだノリ漁をなりわいにしている櫻井健太さん(43)。 櫻井健太さん 「教わったというか、見て覚えろ的な。昔の漁師なので、そんな感じですね。遊びも全部海なので好きですね」 大曲浜の近くにあった家は、津波で全壊しました。かつては住宅が立ち並んでいたといいますが、町並みは大きく姿を変え元の風景は想像できません。 現在は市内の内陸部に家を再建し、家族と暮らしています。 父・慶喜さんは東日本大震災の津波で亡くなりました。当時60歳。大切な船を見に行くと海へ向かい帰らぬ人となってしまいました。 櫻井健太さん 「『船を見てくる』と言ってそれっきり。仕事熱心だったので、船は道具、命みたいなものなので」 櫻井さんは、父を止めなかったことを今も悔やんでいます。 櫻井健太さん 「引きずってでも、一緒に逃げればよかったなって」 父や家だけでなく、震災前にあった養殖設備も津波で失いました。しかし、父の遺体と対面し、ノリ漁を必ず復活させることを決意したといいます。 櫻井健太さん 「お父さんに負けないようなノリ作りをしていきたい」 仲間とともに、震災の2年後に養殖を再開。味のりなど新商品の開発も行なって販路を開拓し、収入は震災前より増えたといいます。近年の海水温の上昇で、収穫期が短くなるなどの不安があるものの、師匠でもある父の姿勢が背中を押しています。 櫻井健太さん 「うちのお父さんはまあ諦めないですね。必ず最後までやってました。最終日まで。みんな結構早めにやめちゃっても、最終日まで絶対やっていた」 多くのものが失われた東日本大震災の発生から、13年9カ月。再生にこぎつけたノリ漁と暮らしを守るため、父とともに、海と向き合います。 櫻井健太さん 「どこの家庭も一緒だと思うが、けんかしながらやっている。親子って。だからいいノリ取ろうとけんかしながらやってたんだろうなって。みんなに負けないような色・ツヤともに味もいいようなノリを作っていきたい」
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