アニメ『ハイキュー!!』監督にカムバックした満仲 勧が劇場版で挑んだ「試合のリアリティ」への追求
■ドラマの中心は「研磨」 ――満仲さんはアニメーターとしても活躍されており、高校野球を描いた『おおきく振りかぶって』の作画はアニメファンから高く評価されていました。スポーツアニメを作るうえで意識されていることはありますか? 満仲 僕は草野球をやっているんですが、試合中に実際のバッターボックスやコートに立っているという「選手の目線」は、とても意識しています。選手との距離感やボールの速さなどですね。観客から見たスポーツの面白さだけでなく、プレイしている人にとっての魅力はどこなんだろうとは、常に考えています。 ――選手の目線を映像的に再現したい? 満仲 それはすごくあります。『ハイキュー!!』でも「頂の景色」というのがあるのですが、それは主人公の日向翔陽は中学時代、スパイクを打つたびにブロッカーが邪魔してネットの向こう側を見ることができなかった。しかし、烏野高校で影山飛雄という最高のセッターと組んだら、ブロッカーのいないところに絶好のトスが上がるので、ついにネットの向こう側を見ることができるようになった。それを映像で具体的に描く。そういうところがアニメ化で大切にしていることです。 ――選手が実際にゾクッとする瞬間をお客さんにも体験してもらいたい。 満仲 そこはやっぱり、原作の古舘先生がとてもしっかり描いてきたことですからね。原作を読んだときのように、アニメを観るお客さんにも、「自分もバレーボールをやってみたい!」と思わせられるような作品にしたいとはずっと思っていました。 ――『ゴミ捨て場の決戦』は原作でも1、2を争う人気エピソードです。映画では満仲さんが脚本も担当されていますが、脚色はどういった方針で? 満仲 映画にするためには、「どこにドラマの焦点を当てるのか」ということですよね。その意味では孤爪研磨の感情が、このエピソードの中では一番動いていました。 特に理由もなく周りに流されるままバレーボールをしていたけど、日向に出会ってスポーツとしての魅力を感じ始める。すごくドラマティックです。 だから、研磨を中心に構成していくことにしたんです。 ――では、研磨が好きな人には相当グッと来る内容に? 満仲 そう思います。見せ場が多いので、研磨役の梶(裕貴)さんは本当に大変な収録になったと思いますが(笑)。上映時間は90分くらいですけど、すごく濃密な90分になっていると思います。