163キロ右腕ロッテ佐々木は1軍C抜擢もヤクルト奥川、中日石川、阪神西は2軍スタート。新人の育成方法の正解は?
「大学、社会人と高校生では体の出来具合、基礎体力が違います。それに高校生は夏の大会後に、どれくらいの練習をしてきたかが把握しづらいですから無理にプロの1軍キャンプに入れると故障のリスクが増します。どうしてもいいところを見せようと頑張ります。なおさら故障の危険が高いのです。個々の現状、体力を見ながらじっくりとファームで体作りからスタートさせる、プロの水に慣れさせる、という、ここ数年のプロ野球界の傾向は正解だと思います」 しかし、里崎氏もロッテのスーパールーキー、佐々木の1軍抜擢に関しては特別なケースと見ている。 「佐々木に関しては事情が違います。ロッテは1、2軍が同じ場所でやっていますし、投手は極端な話、最初のアップ、投内連携以外は1、2軍のメニューが変わりません。1軍での緊張や、頑張りすぎてケガをするというリスクがロッテの場合、構造的に少ない。佐々木が1軍に抜擢されることのデメリットは何もないでしょう。もし佐々木が2軍キャンプスタートとなると多くのメディアが2軍の方に取材に動いて1軍の士気が落ちるでしょうしね」 ダルビッシュ有や、大谷翔平らのスーパールーキーを育て、「育成の日ハム」として定評のある日ハムは、ルーキー全員を2軍キャンプスタートとした。1位の左腕、河野竜生投手(JFE西日本)、2位の右腕の立野和明投手(東海理化)は、いずれもドラフト前から即戦力として評判の社会人だったが、無理はさせない。昨年も甲子園スターのドラ1、吉田輝星は1軍の米国キャンプに帯同させず沖縄の2軍キャンプからスタートさせた。 日ハムのファームの首脳は、「何も手をつけるな!が球団の考え。まず高校時代のベストの状態に体も動きも戻るまで負荷もそれほどかけずゆっくりと時間をかける。そこから先に、何か技術的なものを変える場合も球団の許可が必要。高卒ルーキーはよほどのことがない限り、そういう方針で育成する」と語っていた。 実際、昨年の春季キャンプ序盤の練習メニューは、吉田が「もう終わり?」と驚くほど軽めだった。 広島も日ハムに育成方針が似ている。甲子園で本塁打記録を塗り替えた中村奨成も3年目にして、ようやく1軍キャンプに抜擢された。育成で成功した日ハム、広島がモデルケースとなり球界全体に「高卒ルーキーは焦らず2軍から」の傾向が浸透したのかもしれない。