毒親に受験生のメンタル問題…教育系パーソナリティ・葉一が『Voicy』でセンシティブな悩みに寄り添う理由
応募通過率5%のパーソナリティが集まり、厳選されたコンテンツを提供する音声プラットフォーム『Voicy』。著名なパーソナリティが配信していることもVoicyの特徴の一つだ。他分野で活躍する”実は音声配信をやっていた”パーソナリティに、その魅力や自身の配信のこだわりを聞く連載企画『「音声配信」にしかできないこと』がスタート。 【写真】葉一のインタビューの様子 第1回は、YouTubeで授業動画を投稿し、チャンネル登録者数200万人を誇る「とある男が授業をしてみた」を運営する教育系クリエイター・葉一を迎えた。(2024年8月24日時点)Voicyでは、リスナーの深刻な悩みに寄り添い、多くの子どもたちとその保護者から支持を集めている。 今回はVoicyで配信をはじめたきっかけや、音声コンテンツとVoicyの魅力について話を聞いた。 ・「子どもたちも安心」身近な存在になり得るためにはじめた“Voicy” ーー2021年9月にVoicyで配信を開始した葉一さん。当時、多くの登録者を抱えるYouTubeチャンネルを持っていましたが、なぜ音声配信を始めたのでしょうか。 葉一:単純に学生時代、よくラジオを聴いていたり、もともとラジオが好きだったりしたことが大きいです。YouTubeは顔が出ているからこそ伝わる魅力があると感じています。一方で音声配信にも、声だけだからこそ伝わる温度感などの魅力があると感じているんです。 ーー声色と表情の両方で伝わるものもあると思っているんですが、声色だけでも魅力が伝わるというところで音声配信に挑戦されたんですね。 葉一:そうですね。いまの子どもたちは映像ありきというか、画面からの視覚情報が8割、9割を占めているような子どもたちが多いと感じています。だから再生数や影響力を追い求めるのなら、クリエイターとしてはYouTubeの強化が正解だと思うんですよね。 でもちょっと私自身は天邪鬼なところがあって、逆張りをしたくなるというか(笑)。こういうご時世だからこそ、音声だけのコンテンツの魅力を子どもたちに伝えたいんですよね。いまって年齢問わず、皆さんがLINEやSNSを利用されていますが、こういう時代だからこそ、私は子どもたちにも親御さんにも手紙というものの魅力を伝えているんです。手紙だからこそ届けられるものを子どもたちに知っていてほしくて。それと似通った感覚ですが、そんな想いから音声配信にチャレンジしたという感じです。 ーー音声コンテンツへの思いがとても伝わってきました。音声コンテンツに挑戦するにあたり、ほかにもたくさんの音声プラットフォームがあるなかでなぜVoicyを選ばれたのでしょうか。 葉一:ちょうど音声に特化したプラットフォームが欲しかったというのと、もともとVoicyで人気パーソナリティーの方のコンテンツを聞いていたので、Voicy自体が身近だったんです。そこでVoicyの担当者の方からお声掛けいただいたんですが、著名な方々がコンテンツを作られているしっかりとしたプラットフォームという安心感もありましたし、アカウント登録をしなくても視聴ができるというのもポイントとして大きかったですね。 子どもたちにとって、無料だとしても親の許可なしでアカウント登録をするというのはハードルが高いんです。ご家庭によっては後で怒られてしまう可能性があるので、そういった意味でVoicyは安心で、子どもたちにも身近な存在になり得るかなと思って選ばせてもらいました。 ーーたしかに、アカウント登録の必要があるかないかで心理的ハードルはだいぶ違いますよね。実際にVoicyで音声配信を始めてみて、お子さんたちの反応は葉一さんの予想通りでしたか? 葉一:思っていたよりも子どもたちが聞いてくれています。また、想像以上に保護者の方も多く、ご家庭によってはお子さんと一緒に聞いてくださって、家庭の話題を1つもらえたというようにいってくださる方もいらっしゃるので、そこは意外でした。 本当は1年間続けばいいかなと思ったんです。というのは、ひとまずは1年間走ろうというように期限を決めないと頑張れないタイプなんです。1年間継続できれば十分だなと思って始めたら、もう3年経ちそうなんですよね(笑)。 ーー想像以上の反応だったんですね。葉一さんのなかで、動画プラットフォームと音声プラットフォームはそれぞれどのような場所なのでしょうか。 葉一:YouTubeでもいろいろなコンテンツを作ってきましたが、私自身の考え方などのより深い意味での葉一を届ける場所はVoicyだと思っています。なので、Voicyを聞いてくれている子たちはおそらくYouTubeを見てくれていて、葉一という存在にもうちょっと近づきたいと思っている子たちが聞きにきてくれているので、Voicyはそういった子たちのニーズに応える場所と位置づけています。 ・「この言葉に救われました」Voicyの距離感が生む、お礼のメッセージ ーーYouTubeでは葉一さんがどのような方なのかがわかるコンテンツで、Voicyはより身近に感じられるようなコンテンツなんですね。YouTubeのラインナップとVoicyでの配信内容にはどういう違いがあるのでしょうか。 葉一:もともとYouTuberではあるので、多くの方に向けたコンテンツはYouTubeでやろうと思っています。YouTubeを見てくれている子たちもVoicyを聞いてくれてはいるんですけど、Voicyってある悩みに対して私がキャッチボールを投げ返しているコンテンツなんですよね。 YouTubeでは多くの人に共通する内容を取り上げているんですが、そのなかでもコアなファンの方がついてくださっていて、そういった方たちとの距離感にすごく気をつけています。私は相談にのる立場なので、視聴者と近すぎてもいけないし、遠すぎちゃいけないと思っています。子どもたちには“近所のおっちゃん”と思ってほしいんですけど、ちょっと頼りたいなと思ったときに、「登録者200万人もいるYouTuberだし」と敬遠されてしまう可能性もあります。なので、Voicyでは”気軽に相談できる人”という距離感を感じてもらえるような話し方に気をつけていますね。 ーーVoicyのコンテンツはYouTubeに比べ、悩み相談がメインになっていますよね。悩み相談でリスナーとの距離を近づけるというのが、Voicyでの戦略だったんですね。 葉一:そうですね。Voicyのコンテンツを作るために、Googleフォームで悩み相談を募集しているんです。YouTubeのコメント欄は全員に見えてしまいますが、そのフォームを記入するときには、ラジオネームなどを使って書けばいいので匿名性も高いし、私にしか見えないので悩みが重たいんですよ。コメント欄では書けないような深い悩みを相談できる場所として、Voicyのアカウントを運営しています。 ーー深刻な悩み相談が寄せられるというのは、Voicyを始めたときに想像されていたのでしょうか。 葉一:もともとメールの方には届いていたので、ある程度は送られてくるかなとは思っていたんですが、やればやるほど深い悩み相談の比率が上がっていくので、いまは予想よりも多いと感じています。 ーーYouTubeに比べVoicyの方が社会的な一面がより色濃く反映されているようですね。Voicyでは悩み相談、YouTubeでは勉強を教える授業コンテンツを作られていますが、VoicyとYouTube両方を使用することによってプラスになったことや活動において変化したことはありますか? 葉一:いわゆる毒親といわれるような親御さんから「生まなきゃよかったって毎日言われるんです」といった相談もくるのですが、そのトピックはYouTubeでは取り上げられないんですよ。少数ですが、動画のコメント欄に心無いことを書く人が出てきてしまうので、間接的に同じような悩みで苦しんでいる子たちを傷つけてしまう可能性があるんですよね。なのでYouTubeでは、受験生はどうやってメンタルを保てばいいかというような、より多くの人に共通する相談を取り上げているんです。それがVoicyを始めたことによって、センシティブな内容や私の思いを発信できる場所ができたので、自由度が増したと感じています。 ーーコメント欄の状態も企画内容に関係しているんですね。配信内容の自由度のほかに感じているVoicyの魅力、音声コンテンツの魅力はありますか? 葉一:相談にのっていると、月に1回程度、(カット)Googleフォームに「2021年の何月何日に応えてもらった〇〇です」「こういうコメントをもらって、それから2年、こういうこと頑張ってこうなりました。あのときのこの言葉に救われました」のようなメッセージがくるんですよ。その子のなかにはあの回の私の言葉がちゃんと残ってくれていて、ふとVoicyを聞いていてお礼を言おうとフォームに書いてくれるんですよね。これはVoicyのこの距離感だからこそ生まれているものなのかなと思っていて、印象的なところですね。 なによりVoicyさんには感謝しかないです。めちゃめちゃ使いやすいんですよ。収録だったり、配信する上でもストレスなくやらせてもらっていて、本当に感謝しています(笑)。 ・Voicyでの活動を通して「学校の先生の社会的地位を上げたい」 ーーYouTubeのコメント欄ではおそらくあまりなかった交流の仕方でしょうし、葉一さんご自身も励みになりますよね。今後どういう挑戦をしていきたいか、展望を教えてください。 葉一:Voicyでは子どもたちの悩み相談に応え続けていきたいなと思っています。60代のおじいちゃんになったときに、そのときの中高生、私からみた孫世代の悩み相談に答えたらかっこいいなって。私自身、2人の子どもを育てていますが、子どもたちが幸せになることしか考えてないんですよ。そのためになにができるのか、なにが必要なのかを考えたときに、親御さんのストレスがなくなること、笑顔でいることが家庭の幸せのひとつだと思うんです。なので保護者の方の悩みや相談に応えるような、保護者の方たちになにかを伝えられるようなコンテンツが作れたらいいなって思っています。いまはまだ長男が11歳なので、中高生の親御さんの経験や悩みに追いついていないんですが、「分かります、その悩み」という話ができたらいいなと思います。 ーーあと20年ほどあることを考えると、ますますいろんな悩み相談が寄せられそうですね。Voicyでやりたいこと、考えている企画はあるのでしょうか。 葉一:Voicyのパーソナリティの方には多くの学校の先生がいらっしゃいますが、実は私には全国の学校の先生の社会的地位を上げたいというミッションがあるんです。学校の先生って近年、不祥事だけが取り上げられているので、「先生なんて」と軽視する人が増えてしまったんです。先生ってすごく魅力的な存在なのに、たくさんいる先生の一部の人だけを切り取って、すべての先生がダメになったというようないわれ方がすごい悔しいんですよ。 私も教育という看板がありますが、学校のなかにはいないからこそ、現場の先生方とタッグを組んだときに面白い科学反応が起こせると考えています。パーソナリティをされている先生方たちと一緒に、私の視聴者の子どもたちに先生という存在の距離感を変えられるようなチャレンジができたら嬉しいなと思っています。 ーー学校外での先生方の活動が広がるっていうのは、先生方の世界も広がって面白そうですね。 葉一:先生方のVoicyは聞いていて面白いですよね。そういうところが視聴者に届けられたらいいなと思います。
せきぐちゆみ