⚽【来季J1清水エスパルス 復権ののろし㊤】現場重視の補強戦略 特長熟知、新戦力フィット
3季ぶりのJ1復帰を決めた10月27日のアウェー栃木戦。歓喜の輪の中心には決勝点を挙げた今季新加入のDF住吉ジェラニレショーン(27)の姿があった。ゴールにつながるCKのキッカーはMF宇野禅斗(20)、ニアでそらしてアシストしたのはMF中村亮太朗(27)。いずれも今季の新戦力だ。 J1での経験が豊富でJ2山口から今季加わったMF矢島慎也(30)も、途中出場から高い技術とキック精度で何度もチームを救った。例年以上に新加入選手がフィットした舞台裏には、現場の意見を反映した選手の補強戦略があった。 これまでフロントが独断的に決めていたのに対して、今季は昨季から指揮を執る秋葉忠宏監督(49)の要望を重視した。住吉は水戸の監督時代、矢島はリオデジャネイロ五輪のコーチ時代の教え子。特長を熟知していた。 昨季途中に秋葉監督がコーチから昇格するまで、5季連続で監督が交代。クラブとして明確なスタイルがないまま、監督が代われば求めるプレーや戦力は少なからず変化する。シーズンをまたいで同じ監督が指揮を執る意義を結果で示した。 J1昇格とJ2優勝という大目標は果たしたが、同時にJ1で勝てる水準を目指した中で来季に持ち越す課題も残った。今季ホームで唯一敗れたのが山形戦。勝てばJ1昇格が決まった試合で終盤に逆転を許し、ある選手は「完敗。山形の方がやるべきことが明確で当然の結果」とチーム力の差を認めた。 実際に横浜FC、長崎、山形とリーグ2~4位の上位陣には2分け4敗と勝利なし。優勝は下位に取りこぼさなかった結果と評価もできるが、最終節でゴールを決めるなどチームを支えたDF原輝綺(26)は「今は個の力で何とかできているだけ。それがJ1でも通用するのか」と今季を通じて仲間にレベルアップを求め続けた。どれだけ戦術、戦力を上積みして新シーズンに挑めるか。来年1月上旬の始動に向け、やるべきことは明確だ。 ◇ 3季ぶりのJ1復帰を決めた清水。クラブ史上初めて2季連続でJ2となった今季を振り返り、J1で戦い続けるための課題を考える。
静岡新聞社