役所広司、浅田真央……多数の著名人を輝かせたファッションクリエーターが明かす「人生の輝かせ方」
「東京ヴィンテージガールズ」プロジェクト始動
仕事がどんどん広がっていく中、「スタイリストになるきっかけをくれた」小泉とは、仕事で一緒になることはほとんどなかったが、昨年末、再び朗読劇の仕事でオファーをされ、約30年ぶりに濃いつながりが復活した。 「コロナの時期にサステナブルな、アップサイクルのファッションショーを開催したいと考え、配信でやってみました」 アップサイクルとは、別の用途に作り替えて付加価値を与えること。安野さんは、まさにSDGsの時代に即した思いを胸に秘め、さらに大々的な開催を構想していた。どうやって、どんなメンバーで、そのファッションショーを実現するか……と、考えを巡らせていた。 音楽プロデューサーでDJの高木完さんにその話をした時、「いいね! 変わってないね! ヴィンテージガールズだね」という高木さんからもらった一言が、動き始めるきっかけになった。 高木さんは、「モデルやスタッフは、1980年代に活躍していた伝説の女性たちだとかっこいいんじゃない」と提案。二人は意気投合。早速、アーティストの小泉今日子に声をかけたという。 具体的に動き出したのは、今年1月。安野さんは元日に発生した能登半島地震の被災地支援活動で支援物資を集め、その仕分け作業を小泉と画家のきしくりさんが手伝っていた。 「シニア世代が、ますます元気に楽しく余生を過ごしていくための促進剤になれたら。いきなりファッションショーはできないけれど、まずはこの3人で社会貢献につながることしない?」 二人は安野さんの提案に賛同。こうして「東京ヴィンテージガールズ」が結成された。 まずはYouTube配信をすることからプロジェクトがスタートし、CASUCA表参道本店で、売上金の一部を能登半島地震の被災地や中東のガザ地区へ送るチャリティーフリマを開催した。 ◆大切にしている言葉 「私の今までは、すべて一言声をかけてもらったところから始まっていると思うんです。事の始まりは覚えていたいなって……。ですから、その一言声をかけてもらったということに感謝を忘れないでいることを意味する『一言芳恩』という言葉を大切にしています」 その言葉通りに生きてきたからこそ、多くの人たちからの信頼を得て、みんなに愛されてきたのだろう。 自らが主宰するジュエリーブランドが、店舗を6月に表参道から目黒に移し、「CASUCA HISTORIA(カスカ イストリア)」として、10日にオープンした。その記念として作ったジュエリーのモチーフは、「ブルーブッシュ」。表参道本店のシンボルツリーからイメージしたという。すべての人やモノへの感謝の気持ちを忘れない安野さんの姿がここにも見てとれる。 目黒の地、歴史ある洋館で、新たにどんな物語が生まれていくか、安野さんの人を輝かせるための挑戦はこれからも続く。(文中敬称略) 取材・文:平松利津子
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