役所広司、浅田真央……多数の著名人を輝かせたファッションクリエーターが明かす「人生の輝かせ方」
その後、小泉のスタイリストとしての仕事は10年ほど続いた。この経験が他のアーティストや多方面のスタイリストの仕事へ広がっていった。 1994年には、スタイリスト事務所「CORAZON(コラソン)」を設立。ともさかりえ、井川遥、永作博美、持田香織(ELT)、フォークデュオの「ゆず」、小林聡美、長澤まさみ、のちに役所広司や松坂慶子のスタイリングを手掛けていくことになる。 また、’14年に開催されたソチ五輪の際には、フィギュアスケートの浅田真央選手のコスチュームデザインを手がけ、繊細で優美な衣装が話題になった。 「魂は細部に宿る、という言葉がありますよね。大味なものよりも、私の中ではいつも細部が気になるんです。年齢を重ねれば重ねるほど、皆ジュエリーに助けていただきたい気持ちもあるのでしょうか、大ぶりなものを好む方が多い印象がありますが、私は、繊細に輝くものを重ねづけしたほうが、肌がきれいに見えて、ご本人の魅力が増すと感じています」 浅田とはCMの仕事で出会った。その衣装を着た浅田に「競技の時にも着られるかも」と言われ、それがきっかけでコスチュームを手掛けることになったのだった。 「真央さんの場合は、儚い透明感やフワッとしながらもエネルギーにあふれる感じをどう表現するかということを考えました」 紫色が好きだという浅田の希望を受けて、ショートプログラム用には、紫系で2種類のデザインを考えた。柔らかさが表現できる絹素材を使い、生地をスミレ色のグラデーションに染め上げ、大小のスパンコールを無数にちりばめたコスチュームは、演技に輝きを添え、見る者の心をつかんだ。 世界的に話題になった映画『PERFECT DAYS』で主演をつとめた役所広司とは、14年ほどのつきあい。衣装として映画に参加してはいないが、カンヌ国際映画祭やアカデミー賞発表の際にはチームに同行するほどの信頼を得ている間柄だ。 スタイリングをする際には、「役所さんはとてもセンスのよい方。最終的にはご自分でチョイスされますが、スタイリングではその漂う色気を消さないように、どこかしどけなさが残るように気を配っています」と言う。具体的には、「同年代の方が好まれるラインよりも、若者が見てもいいな! と思ってもらえるラインを意識してスタイリングしています」と続けた。 「スタイリングの際には、その人の持ち味を生かしつつ、より素敵に輝かせられるように願いながらスタイリングしています」 スタイリストの仕事は人を輝かせること。人を輝かせるには、観察眼、発想力、チャレンジ精神、流行をとらえる力などが必要。答えのない世界で、その人らしさを失わずに輝かせるセンスを日々、磨いている。