「天井に人が刺さった」「垂直に落ちた」── 再び起きた「超」乱気流と恐怖と混乱の機内
<激しい乱気流による緊急着陸といえば、5月にシンガポール航空の事故(心臓発作で1人死亡)があったばかり。気候変動のせいで、乱気流のリスクが増大している可能性もあるという>
スペインのエア・ヨーロッパは7月2日、同社がブラジルのナタール空港に送り込んだ飛行機が現地に到着したと発表した。これは、前日の1日にブラジルに緊急着陸していた、大西洋を横断するフライトの乗客を移送するための飛行機だ。この緊急着陸では、激しい乱気流を受けて、30人以上の乗客乗員が負傷していた。【ジーザス・メサ】 【動画】乱気流による揺れの激しさがありありと伝わる機内の様子を映した動画 7月1日の早朝、スペインのマドリードからウルグアイのモンテビデオに向かっていたエア・ヨーロッパのUX045便は、大西洋上空で激しい乱気流に遭遇。ブラジルのナタール空港に緊急着陸した際、30人以上が負傷した。 機体は「ボーイング787ドリームライナー」で、乗客乗員325人が乗っていた。 この事故で、男性1人が鼻中隔を骨折し、女性1人が肋骨を骨折して呼吸に補助が必要になった。23人がブラジルのワルフレド・グージェウ病院で手当てを受け、うち2人は重症だった。 エア・ヨーロッパによると、同機のパイロットは乗客に対し、レーダーでは捉えられない乱気流の発生が予想されることから、シートベルトを締めるよう指示していたという。 ■「人が空中を飛ぶのを見た」 乗客たちは地元メディアに、事故が発生したときの混乱と恐怖を振り返っている。「シートベルトを締めていなかった人たちは空中に放り出され、中には天井に体を打ちつけている人もいた」と、ある乗客は現地紙「エル・オブセルバドール」に語っている。ソーシャルメディアに投稿された写真では、座席に血がついたような様子も見える。 客室から撮影された動画では、首にギプスをつけた乗客や、通路に仰向けに横たわった乗客が見える。頭上の荷物入れから足だけが見えている男性もいた。なぜ頭上の荷物入れに体を突っ込むことになったのか、男性はのちにウルグアイのニュース番組「スブラヤード」に語った。
気候変動でリスクが増大?
「私は、天井とあらゆる配管を突き破った。20秒の間に、ありとあらゆることが脳裏を駆け巡った」 乗客の1人シルビア・ガルシアは、スペインの新聞「エル・パイス」に対してこう語った。「人生最後の日だと思った。パイロットは乗客に、8秒で500メートル降下したと話していた。乱気流どころではない」 「天井からぶら下がっている人が何人もいて、ひどいケガをして、足がぶらぶらしていた。人が空中を飛び、落ちてくるのを見た」と、ガルシアは付け加えた。 「あれは乱気流なんてものじゃない。垂直降下だ。ただ揺れたのではなく、真っ逆さまに落ちた」と、43歳のウルグアイ人で心理学者のクラウディオ・フェルナンデス・アルベスはAFP通信に語った。 航空機の機体が安定を取り戻した時には急ブレーキがかかり、「車が衝突したかのように感じた」と、フェルナンデスは振り返った。多くの人は、他の乗客や、飛んできた物にぶつかった、とフェルナンデスは証言している。 複数の目撃証言によれば、2歳の子どもが荷物入れから出られなくなったほか、何人かは天井からぶら下がったままになり、落ちてくる時にケガをしたという。 アメリカ連邦航空局(FAA)によれば、乱気流はさまざまな気象条件によって、予想もしないところで起きる可能性があるという。乱気流によるケガの事例は比較的稀だが、FAAは、2022年に17件、2021年に6件の重傷事例があったと報告している。この5月には、ロンドンを出発したシンガポール航空のフライトが激しい乱気流に巻き込まれ、その後イギリス人の高齢男性が心臓発作とみられる症状で死亡する事故が起きた。 今回のUX045便の飛行中に起きた事故は、空の安全、さらには乱気流が民間航空にとって今後さらなる脅威になりうるのか、という問題をめぐる懸念を高めるものだ。激しい乱気流は稀なものであり、避けることができるケースが多いが、最近の研究では、気候変動がそのリスクを増大させている可能性が指摘されている。 (翻訳:ガリレオ)
ジーザス・メサ