「コンサート手話通訳」って何?聴覚障害者「楽しさが20%から80%に」歌詞なし曲でも“音を通訳する”プロ
■聴覚障害者「聞こえる方と一緒に楽しみたい」
担当する通訳によって、違いがあるのもまだ“味”だ。長谷川さんが「手話通訳の方々の感性によって誤差がある。そこを選ぶのがアーティスト。アーティストによって合うもの・合うものが出てくる」と述べると、ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「ある種の2次コンテンツだ。誰が翻訳するかで微妙にテイストが変わるのは、翻訳者の力量だ。英語翻訳でも『元の英語の文章、そのままじゃない』と怒る人もいるかもしれないが、翻訳者の性格や、特異性があって日本人に伝わっているならば、それでいい。ある意味、文化の伝え方は一様ではないので、そこにいろいろな人が挟まって、表現が変わってくるのは、文化の伝播の理由としてアリだ」と説明した。 聴覚障害者の来場者は、実際にコンサート手話通訳によって、どう楽しめているのか。先天性の聴覚障害があるさあやさんは、会場内では音の振動の大きさ、会場の照明を目で見て楽しんできた。ここにコンサート手話通訳が入ることで「何の曲を歌っているかすぐわかる」「MCもリアルタイムで理解できる」「周りの観客と同じタイミングで盛り上がることができる」など、よりライブ感を味わえるようになった。「コンサート手話通訳がいない時は20%ぐらいの楽しみ方。聞こえるファンと同じように、私も一体感を楽しめるので、手話通訳はすごく必要。80%ぐらい楽しめるようになった。聞こえる・聞こえない関係なく、みんなで楽しみたい。固定の聞こえない人だけで楽しむのではなく一緒に楽しみたい」と語った。 これには佐々木氏も「障害のある人・ない人が同じ空間で関係なく、同じことができるのがユニバーサルという言葉の基本的な理念だ。コンサート手話という演技と、音楽のライブがだんだん融合していくのでは。バンドでもフューチャリング何々のようにボーカルだけ別の人が出ている形態もよくある。そういう形態で1人のアーティストとしての手話通訳と音楽アーティストのグループが、いろいろな組み合わせになる可能性はあるのでは」と、単なる「通訳」という役割だけではなく、「アーティスト」になる未来にも触れていた。 (『ABEMA Prime』より)
ABEMA TIMES編集部