平均寿命は「男性81歳」「女性87歳」だけど、年金を65歳から受け取ると“損”になる? 60~75歳で受給開始した場合の「お得な年齢」を試算
公的年金である「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」は原則として65歳から受給できますが、繰上げで受給開始時期を繰り上げたり、逆に受給開始時期を繰り下げたりすることもできます。 本記事では、平均寿命まで生存すると仮定した場合、何歳から年金を受け取るのがお得なのかを試算して紹介します。 ▼65歳から70歳まで「月8万円」をアルバイトで稼ぐと、年金はどれだけ増える?
年金は「60歳~75歳」のどのタイミングで受給を始めるかで、受け取れる金額が異なる
公的年金には、国民年金(基礎年金)と厚生年金の2種類があります。20歳以上60歳未満の全ての人が加入の対象になる国民年金に対し、厚生年金は会社員・公務員が上乗せで加入することになります。 老齢基礎年金を受け取るには、10年以上の受給資格期間が必要です。また、厚生年金は老齢基礎年金の受給資格があり、厚生年金の加入期間があれば受給できます。 受給要件を満たす人の受給開始年齢は基本的に65歳ですが、「繰上げ受給」という制度で60~65歳になる前までの間に受給開始時期を早めて受給することができます。また「繰下げ受給」を選択することで、最長で75歳まで受給開始年齢を遅らせることも可能です。 繰上げ受給を選択すると、受給を1ヶ月早めるごとに年金額が0.4%ずつ減額になり、最大で24%減額されます。一方、繰下げ受給を選択すると、受給を1ヶ月遅らせるごとに0.7%の増額になり、75歳まで繰り下げると最大で84%も受給額が増加します。 受給開始時期をずらすと、増額または減額された年金額が生涯適用になります。あとから受給額を変更することはできないため、いつから受給し始めるかは慎重に考えなければいけません。
日本人の平均寿命まで生きると仮定すると何歳からの受給がお得?
厚生労働省によれば、2023年時点の日本人の平均寿命は男性が81.09歳、女性が87.14歳です。 何歳から年金を受給するのがお得なのかは、何歳まで生きるかそれぞれ異なることから一概には言えません。そこで今回は受給開始年齢を60歳、65歳、70歳、75歳に分け、それぞれの損益分岐点を試算してみましょう。 まずは、繰上げ受給の場合、60歳から繰上げ受給をすると「0.4%×60ヶ月=24%」が減額されます。65歳での受給額を100としたときに、減額された24%が何年分かを計算すれば損益分岐点が分かります。 計算式は「100×5年÷24%=20.83333年」です。受給開始から約20年と10ヶ月、つまり81歳を超えたあたりから65歳からの総受給額の方が大きくなります。 81歳よりも長生きすると仮定するなら65歳からの受給が有利ということです。女性の場合、平均寿命が87.14歳であることを考えると繰上げ受給をしないほうが年金を多く受給できる可能性が高くなります。 次に、繰下げ受給の場合を見ていきます。70歳まで5年繰り下げた場合の増額率は42%、最長75歳まで受給開始年齢を繰り下げると増額率は84%です。計算式は「100×5年÷42%=11.904」「100×10年÷84%=11.904」となります。 損益分岐点は70歳から約11年11ヶ月後の81歳11ヶ月、あるいは75歳から約11年11ヶ月後の86歳11ヶ月です。70歳から受給するなら82歳、75歳から受給するなら87歳よりも長生きするとしたら繰下げ受給したほうが有利になります。
まとめ
どの年齢から受給開始するかで損益分岐点は異なりますが、人それぞれの寿命という不確定要素がある以上、「何歳からの受給が有利」と断言することはできません。割安と分かっていても、家計の経済状況次第では繰上げ受給をした方が良いこともあります。 現在の家計の状況、健康状態、ライフプランなどを総合的に判断して、何歳から受給を始めるか決定しましょう。 出典 日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額 日本年金機構 老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額 厚生労働省 令和5年簡易生命表の概況 執筆者:FINANCIAL FIELD編集部 ファイナンシャルプランナー
ファイナンシャルフィールド編集部