トランプ時代に迎合、ファクトチェック廃止...ザッカーバーグのメタが示す「右傾化の兆候」
<メタ世界政策責任者は長年の共和党員。ファクトチェック廃止や表現規制撤廃を発表。イーロン・マスクに従い右傾化>
メタのマーク・ザッカーバーグCEOは1月7日、同社のポリシーの大きな変更を発表した。同社はこのところ相次いで、ドナルド・トランプ次期大統領に取り入る姿勢を示している。 【画像】イーロン・マスクを爆笑させたミーム画像...ツイッターをパクるマーク・ザッカーバーグ Facebookに掲載した動画の中でザッカーバーグは、大統領選挙について「文化的転換点」のように感じていると説明。メタはファクトチェックのプログラムを廃止してイーロン・マスクのX(旧Twitter)のようなコミュニティが主導するモデルに置き換え、移民や性自認といった特定の話題については制限を撤廃すると発表した。 メタの最高国際問題責任者に最近任命されたジョエル・カプラン(共和党)は7日、「真の機会がここにある。表現の自由に尽力しているトランプ大統領の就任にあたり、我々はそうした価値観に立ち返り、人々が望む言論や討論の場を提供する」とFox & Friendsに語った。 かつてリベラル派の代表格だったザッカーバーグは、マスクの筋書きに従ってメタのプラットフォーム(FacebookとInstagramを含む)を右傾化させ、トランプ次期政権に取り入ろうとする姿勢を強めている。 2022年にXを買収したマスクは、保守派の声を増幅させるSNSの拡声器へとXを変貌させた。世界一の富豪であるマスクはまた、推定2億5000万ドルを投じてトランプ陣営を支え、現在は次期大統領に対して多大な影響力を振るっているらしい。 ザッカーバーグは発表の中で、政府と「レガシーメディア」が検閲の強化を推進していると批判した。これに先立ち8月には下院司法委員会に宛てた書簡で、コロナ禍でバイデン政権が同社に圧力をかけてコンテンツを検閲させたと訴えた。 ザッカーバーグは「イーロン・マスクの足跡をたどっている」と指摘するのは、テュレーン大学フリーマンビジネス校の教授で「The Venture Alchemists: How Big Tech Turned Profits Into Power(ベンチャーの錬金術師:ビッグテックはいかにして利益を権力に変えたか)」の著書があるロバート・ラルカ。「しかしザッカーバーグにとってトランプと支持者たちのご機嫌取りは、最近の経緯を前提とすると、それよりずっと難しい」と本誌に語った、 「イーロン・マスクの会社のポリシーに直接言及しながらそうした転換を発表することによって、さらには過去の検閲はバイデン政権に強要されたと主張してレガシーメディアを直接批判することによって、ザッカーバーグは今、新時代、すなわちトランプ時代に向けて、自分を作り直そうとしている」とラルカは言う。 その上で、メタの変化は「私たち全てに永続的な影響を及ぼす」と言い添えた。ザッカーバーグ本人でさえも「悪いものがつかまることは少なくなる。未来の歴史家は気づくだろう」と認めている。 ノースイースタン大学教授(政治科学)のコスタス・パナゴプロスは「他社と同様、メタも、次の4年間はトランプがホワイトハウスの主になることを意識しており、ザッカーバーグは自分と自分の関心事に対して大統領が好意的に接してくれることを望んでいる」と本誌に語った。 「トランプと良好な関係を築けば、あるいは少なくとも悪い関係でなければ、メタのためになる。こうした最初の一歩はほとんど象徴的なもので、目的はザッカーバーグがトランプの意に沿う姿勢を示すことにある」(パナゴプロス) ただし「ザッカーバーグがトランプに気に入られるためにできることには限界がある。トランプのメタに対する介入にも限界があるように」ともパナゴプロスは指摘する。 ザッカーバーグは長年の間、トランプと対立関係にあった。トランプは2021年1月6日の連邦議会議事堂襲撃事件を受け、Facebookの利用を禁止された。ザッカーバーグは当時、「選挙で選ばれた後継者に対する平和的・合法的な政権移行を台無しにしようとした」としてトランプを批判していた。 一方のトランプは2020年の大統領選挙でザッカーバーグが自分に対する陰謀を企てたとして非難。もしザッカーバーグが「何らかの違法行為」を行って2024年の選挙に介入すれば、「残る人生を刑務所で過ごさせる」と発言した。さらに、TikTokが禁止されれば自身が「国民の敵」と位置付けるFacebookの人気が高まるとも述べていた。 しかしこの数カ月でザッカーバーグは、次期大統領との関係改善に向けて歩み寄りを見せているようだ。トランプがホワイトハウスを奪還したわずか数週間後には、トランプの別荘マールアラーゴで食事を共にした。メタも他のテック大手と同様に、トランプの就任式に向けて100万ドルを寄付した。 メタが世界政策責任者に据えたカプランは、ジョージ・W・ブッシュ政権で要職にあった長年の共和党員だった。このニュースを最初に伝えたSemaforによれば、カプランは政治的発言の制限に対し、社内で最も声高に反対を唱えた勢力の一人だった。 加えてトランプの側近で総合格闘技団体UFCのダナ・ホワイトCEO兼社長も、メタの取締役に就任した。 シラキュース大学教授(政治科学)のグラント・デイビス・リーハーはメタのこうした動きについて、本誌にこう語った。「メタなどのメディア大手がここ数年でリベラル寄りに傾き、政治的に民主党に有利な編集判断を下すようになったという感覚が一般の間で強まったことを受け、むしろ同社はバランスを取り直そうとしている」 「それが具体的な何かに対する反応だとすれば、トランプ本人やトランプの大統領就任よりも、むしろ選挙結果全般に対する反応だと私は思う。常に念頭に置くべきは、こうした組織の核心は利益の追求にあり、国民の半分を遠ざけることになれば成長は見込めないということだ」とリーハーは話している。