本郷和人『光る君へ』すれ違うまひろと道長。現実として二人が結ばれた<可能性>を考えてみたら意外な結論に…
◆まひろは「Bクラスの令嬢」で道長は「Sクラスの御曹司」 さて、まひろのお父さん・藤原為時は、越前守や越後守になった人。ですから彼女はBクラスの令嬢ですね。 「数ならぬ身」なんて自己表現をしていたとしても、庶民からすれば、それはそれは高嶺の花というべき存在です。 でも相手が悪かった。 道長はAクラスどころか、その頂点である藤原本家の御曹司。いわばSクラスです。 そこだけを見ても二人が結ばれることは難しいかな、と思ってしまいます。
◆当時の貴族の恋愛は「政治的・経済的な行為」 当時の貴族の恋愛は、男が女性のもとに通う「招婿婚」です。女性の側に主導権がある。 そして女性の親は、お気に入りの婿を全力でバックアップします。 ですので出世を目論む男は、単に好きだ嫌いだ、などとは言っていられません。女性と婚姻するとは、お目当ての女性の心をゲットすると同時に、女性のお父さんの援助をがっつり引き出すという「政治的・経済的な行為」だったのです。 こうしてみると、まひろはつらい。彼女はともかく、お父さんがふさわしくなかった。 たしかに藤原為時は学者であって、ドラマで描かれているように、内面も素晴らしかったかもしれない。けれども、政治的・経済的に婿をどれだけ援助できるかといえば・・・ 無力。そして学者というのは、今も昔もそんなものです。(泣)
◆現実問題として 道長はお兄さんや甥の伊周と出世争いをしていかねばならない。となると、強力な後ろ盾が是非にも欲しい。 この点で、現実問題として、まひろは恋愛対象にならないのです。 実際に歴史をひもといてみると、道長は二人の女性と婚姻していて、二人とも左大臣家のお姫様。まひろでは、とても敵いません。 なんだかこう書くと、平安時代の恋愛がひどく功利的な行為に思えてきて、ロマンがないなあ、なんて思ってしまいます。 いや、でも改めて考えてみると…そうじゃない人物もいた! それが道長のお父さん、兼家です。 兼家の妻というと、『蜻蛉日記』の記主として知られる右大将道綱の母がすぐに想起されます。そして彼女のお父さんは伊勢守。つまり、Bクラスの家の出だったのです。
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