<プロ野球>和製大砲が育たない2つの理由
■かつて中村紀は「全打席ホームランを狙う」 確実性のないホームラン打者よりも、ホームランは20、30本程度でも、率の高い打者が好まれる傾向にある。日本ハム時代の小笠原道大(中日)や近鉄時代の中村紀洋(横浜DeNA)のように“フルスイング”を代名詞とする打者は減った。その中村紀から、「全打席ホームランを狙っている。その打ち損じがヒット」という美学を聞いたことがある。当時のパの野球は、セと対極の脱管理野球が全盛でもあった。“右打ち”に代表されるようなチームバッティング最優先の時代に確実性の下がるフルスイングはタブーなのかもしれない。 ■パワーがなくとも技術で本塁打は打てる 掛布氏は、例え外国人並みのパワーがなくとも、技術で長打力はカバーできるという考えを持っている。「巨人、ヤンキースで活躍した松井は、何十年に一人の日本人離れした肉体とパワーを元に、そこに技術をプラスしたホームラン打者ですが、私は、そこまで肉体がなくとも技術でカバーはできると考えています。落合博満がそうです。完全な技術です。元楽天の山崎にしてもフィジカルはありますが、パワーだけでなく打球を飛ばす技術を持っていました。また野村克也さんとの出会いで、苦手なボールを打たないという配球を読む技術も身につけましたね。打球を飛ばすには、体にヘッドを巻きつけるような回転力と、ボールに角度をつけるというヘッドの入れ方があります。私は、現役時代に数ミリ単位で、ボールの下にバットを入れ、スピンをかけてボールに浮力を与えることを意識していました。また引っ張るだけでなく、反対方向へ打球を飛ばす技法もあります。これは、バットのグリップでボールをとらえるイメージでボールの内側をたたきにいく。左中間、レフトの打球も流しにいくではなく、ボールの内側にバットを入れ、ヘッドを遅らせ、左方向へ引っ張りにいくイメージを持つことです。私は中西太さん、山内一弘さんから、これらの技術を教えていただきましたが、これらの技術を選手に身につけさせるためには、指導者の根気強いコーチングも必要でしょう。それと高校野球の金属バットをどうにかするべきです。今や、技術革新しているのですから、限りなく木製バットに近い芯や反発力のバットを作ることも可能ではないでしょうか。プロ、アマが協力して、そういう新しい金属バットを作成して使っていくことも将来、日本人4番打者を増やしていくためには必要ではないでしょうか」。 和製4番が再度プロ野球を盛り上げる時代を作るためには、野球を教える側の理論も含めて解決しなければならない根深い問題が色々と潜んでそうである。 (文責・本郷陽一/論スポ、アスリートジャーナル)