前橋育英の得点王・飯島陸は東京五輪の秘密兵器になれるか
先の全国高校サッカー選手権で初優勝した前橋育英(群馬)のエースで、5試合で7ゴールをあげて大会得点王を獲得した飯島陸(3年)が、新たなチャレンジへの第一歩を踏み出した。 初めて招集されたU-19日本代表の一員として、25日まで都内で行われた3日間の短期キャンプに参加。国際大会が行われるスペインのラス・パルマスへ向けて、同日深夜に羽田空港を飛び立った。 「周りが知らない人たちばかりで、コミュニケーションを取るのがちょっと難しかったんですけど。話しているうちに『あっ、得点王だ』とか『すげえ』という感じで茶化されて、仲良くなることができました。練習自体はまだ軽めですけど、通用する自信はあるので、どんどんアピールしていきたい」 チャンスを嗅ぎ取る得点感覚とアジリティー、相手ゴール前での多彩なアイデアを166cm、58kgの小柄な体に搭載した飯島は、初戦となった初芝橋本(和歌山)との2回戦で4ゴールをマーク。一気に波に乗ると、続く富山第一(富山)との3回戦では終了間際に値千金の決勝点をあげた。 上田西(長野)との準決勝でも2ゴールをゲット。大会を通じて相手校に大きな脅威を与えていたことは、今月8日の決勝の舞台で三本木達哉(3年)を大会初先発させて、飯島のマンマークを担わせた流通経済大柏の本田裕一郎監督の言葉が如実に物語っている。 「飯島君はすごい能力をもっていますからね。放っておいたら、それこそ何点取られたかわからない」 古希を迎えた名将が考え出した「エース殺し」も、延長戦突入かと思われた後半アディショナルタイムで破綻をきたす。最終ラインの裏へ通されたパスに飯島、三本木、そしてキーパーが反応。3人が交錯した弾みで、三本木がわずかながら自分から離れた隙を見逃さなかった。 無人のゴールへ向けて、こぼれ球に左足を一閃。強烈なシュートは三本木に腹部でブロックされてしまったが、再びこぼれたボールを飯島と2トップを組んだ榎本樹(2年)が右足で押し込んだ。チーム全員を涙させた歓喜の瞬間を思い出すたびに、飯島はいまも苦笑いを浮かべる。 「ずっとマンマークされていてやりづらかったけど、必ずチャンスが来ると思って常に狙っていた。そのチャンスを作れたことはよかったんですけど、あの場面では本当に流し込むだけでよかったので。ちょっと慌てちゃってシュートを(三本木に)当てた、という感じだったので」