突然の大地震、「ほんの少しの油断」が生死を分けるかもしれない…日本人が意外と知らない事実
「逃げ遅れ」はなぜ起こるのか
地震や津波、水害等で避難情報が出ても、ほとんど避難しないということが多いのはなぜか。いわゆる正常性バイアスがまず影響している。ちょっとした変化なら「日常のこと」として処理してしまう人間心理のことである。 【マンガ】「南海トラフ巨大地震」が起きた時、もし「名古屋港」にいたら… 例えば、建物の非常ベルが鳴っても、「また、誤報だから大丈夫だろう」と思い込んだり、火災が発生している際に薄い煙であるから「まだ安心だ。そう大きくはならないだろう」と避難しなかったりして、逃げ遅れてしまう。異常を正常の範囲内のことと捉えてしまう錯誤、心の安定を保つメカニズムである。
自分は大丈夫だ、という思い込み
東日本大震災では、90%以上が津波による溺死で亡くなっていると発表されており正常性バイアスが影響したと言われている。津波が沿岸部を襲ったのは、地震発生から30分ほど経過した後、つまり避難する時間がある程度あったにもかかわらず、大多数の人が避難し遅れて亡くなっている。 「自分のいる場所は安全だろう」「大きな津波がきたことなんてないから大丈夫」と、正常性バイアスが働き、事態を小さく見てしまったのが被害拡大の一因だとされている。 コロナ禍でも例えば「自分はコロナにかからないだろう」「飲み会に参加するぐらい大丈夫だろう」と、不要不急の外出をしたり、3密を気にせず行動したりしてしまうケースでは、正常性バイアスが働いている可能性がある。
ゆっくり変化する事象には対応しづらい
正常性バイアスには主に2つ系統がある。 その1つの「同化性バイアス」は急な事象ではなくゆっくり変化する事象には、仮に危険がせまっていても、行動しないというものだ。川の水位が上昇するから危険だとテレビから流れてきても、映像ではその上昇が急ではなかったり、近くの河川水位も大した変化がなかったりするような時は避難しない。津波が来ると言われても、潮位の変化が緩やかな時には避難をしない。 実はその後急に水位が増えたり、ダムの放流で水位が劇的に増加、また関連した崖崩れなども起きたりして被害が発生した例は多い。豪雨による避難情報や警報は夜間目の当たりにすることが目立つが、夜間では安全を意識して行動を避けるという側面もある。 またもう1つ、「同調性バイアス」は、他の人も避難していないから、自分も逃げなくてよい、と判断するものだ。集団に合わせてしまう。周りで大丈夫だから、自分もたぶん大丈夫だろう。という形になってしまう。これらバイアスは本来、心の安定を維持するためのものだが、災害時は逆に危険にさらす可能性がある。