意外と知らない、日本と欧米企業には「決定的な差」があった
国立社会保障・人口問題研究所が最新の将来推計人口を発表し、大きな話題になった。50年後の2070年には総人口が約8700万人、100年後の2120年には5000万人を割るという。 【写真】じつは知らない、「低所得家庭の子ども」3人に1人が「体験ゼロ」の衝撃! ただ、多くの人が「人口減少日本で何が起こるのか」を本当の意味では理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。 ベストセラー『未来の年表 業界大変化』は、製造・金融・自動車・物流・医療などの各業界で起きることを可視化し、人口減少を克服するための方策を明確に示した1冊だ。 ※本記事は河合雅司『未来の年表 業界大変化』から抜粋・編集したものです。
日本企業と欧米企業の利益率の決定的な差
マーケットが縮小し続ける人口減少社会に対応するには「厚利少売」というビジネスモデルへの転換が必要だが、どう実現すればいいのだろうか。 製品やサービスを高価格で設定するには「ブランド力」がモノを言う。中小企業庁の「中小企業白書・小規模企業白書」(2022年版)は、ブランドの構築・維持に取り組んでいる企業の55・9%に取引価格への寄与があったと考えている調査結果を紹介している。築き上げたブランドというのは消費者と企業を強く結ぶツールであり、「価格決定力」を持てるということだ。 それは、マーケットの価格競争からの脱出を可能ともする。近年は外注生産や販売網の多角化で、コストや販売チャンネルの優位性よりも、技術力やブランド力がより重要になってきている。ブランド力は人口減少に打ち克つための大きな武器なのである。そして、ブランド力をより強化していくためには知的財産を活用したビジネスの積極展開が求められる。 知的財産の積極展開と言えば、「オープン&クローズ戦略」もある。これはかなり画期的な技術の開発に成功した場合の手法とも言えるが、そんな画期的な技術を完全クローズしたのでは自社だけで市場を作らざるを得ない。そこで、一部を公開して他社に市場への参入を促すのだ。一方、製品の核心たる重要な技術に絞って秘匿するのである。市場を拡大させることでイノベーションを起こりやすくし、自社の優位性をさらに高めて利益を向上させようというのだ。こうしたやり方も価格決定力を持ちやすい。このように、知的財産権というのは有効に使いさえすれば、人口減少に苦しむ日本企業の“頼もしい援軍”になり得る。 製造コストの何倍の価格で販売できているかを示す「マークアップ率」(付加利益率)という指標があるが、日本企業はこれが総じて低い。 経産省の資料が2016年時点の各国比較をしているが、デンマークの2・84倍、スイスの2・72倍、イタリアの2・46倍などに対し、日本は1・33倍に過ぎない。米国(1・78倍)、中国(1・41倍)の後塵を拝し、G7の中で最下位である。米国やヨーロッパ各国が2010年以降に急上昇させたのに対し、日本は低水準で推移してきた。 日本企業と欧米企業の利益率に開きが生じているのには理由がある。欧米の優良企業は経営戦略において知的財産などへの投資などによって競争の優位性を確立し、製品価値を引き上げてきたのだ。