「わくわくさん」こと久保田雅人、工作の可能性 ものづくりの喜びや楽しさは誰にでも通用する
考え直したほうがいい?自らも経験した「親の気持ち」
成績をつけて評価しようという教員の責任感が、子どもたちの自由な発想を阻むおそれがあると指摘する久保田さん。近年は通知表やテストを廃止する学校も増えているが、その判断に理解を示す一方で、矛盾する「親としての気持ち」も語った。 「学校での子どもの様子を知るために、保護者としては通知表を頼りにしているのも事実だと思います。成績に一喜一憂しないほうがいいのはわかっていても、やっぱり親ってそういうもの。この点は、一人ひとりの保護者が考え直せたらいいなと思います。私も子どもの通知表に対するリアクションが大きかったので、よく妻に『見る前にまず深呼吸して』と言われていました(笑)」 難しいのはわかっているんですが、と前置きして、久保田さんはこんな提案をする。 「本当は、先生と保護者や子どもが一緒になって成績をつけられたら面白いと思うんです。先生が見てくれている子どもの様子、子どもが考えていることを保護者とも共有して、お互いに納得する場にすることもできる。でも、学校にも保護者にも、そんな時間は到底ありませんよね。ここは行政も協力して変わる必要があると思います」 美術系科目として工作を評価する際には、巧拙ではなく本人の思いを重視してほしいという久保田さん。自分なりの工夫ができたかどうか、楽しい時間を過ごせたかどうか。ほかの教科もこうした感覚で捉えられたら、保護者も成績で一喜一憂しなくて済むかもしれないと笑う。 「受験科目以外にもいろいろな教科があるのは、その中から好きなものを見つけてごらんということではないでしょうか」と続けるが、この発想は探究学習の取り組みにおいても重要だ。お手本をその通りにまねるのではなく、何か違っても自分なりに考えて作り出すことは、自ら課題を発見して解決することにもつながっていくだろう。 「私は長く『つくってあそぼ』という番組に出演していました。これは単に作って終わりではなく、作る時間を楽しんで遊ぼう、作ったものでみんなで遊ぼうということだと考えていました。工作で大事なのは楽しむこと。だから子どもはもちろん、私の研修や講演では先生にも楽しんでもらえるよう意識しているんです」 少しでもお役に立てたらうれしいですねと、大ぶりな眼鏡の向こうでにっこり笑った。 (文:鈴木絢子、撮影:梅谷秀司)
東洋経済education × ICT編集部