Amazonやユニクロに潜入したジャーナリストが「潜入取材」にこだわるワケと女性記者に真っ先に潜入してほしいと願う〈ある業界〉とは?
「私には夢がある。それは、いつの日か、日本に潜入記者が10人、いや100人生まれることだ」と話すのは、ユニクロ、アマゾン、ヤマト運輸、佐川急便からトランプ信者の団体まで名だたる大企業・団体に潜入してきたジャーナリストの横田増生氏。横田氏が潜入取材にこだわるワケとは? 著書『潜入取材、全手法』(角川新書)から一部を抜粋・再編集して、お届けします。
外面でなく本当の姿を描ける方法
私には夢がある。 それは、いつの日か、日本に潜入記者が10人、いや100人生まれることだ。 彼らが企業や政治家の事務所、芸能界まで深く潜行し、世の中で知られていない事実を暴き出す。そんなスペシャリストが100人も活躍するようになれば、日本の社会も山椒が効いたようにピリッと引き締まるだろう。 不正な会計処理で系列会社から巨額の賭博代を引っ張り出すボンボン経営者、外部の医師から相談があったにもかかわらず何カ月も公表せず健康被害を拡大させた企業、違法なカネで票を買う政治家、未成年の少年少女を食い物にする芸能関係者、女性へのセクハラ行為を働きながらも口裏を合わせて揉み消そうとする組織──。 そういった人でなしの周りにジャーナリストが身分を隠し、目を光らせ、悪事をすっぱ抜いたときの衝撃は計り知れない。 日本の社会が、もしかしたら潜入記者が周りにいるかもしれないと意識するようになると、不正行為や不祥事への抑止力になる。そんな専門家が日本で100人も活躍するようになれば、社会に心地よい緊張感が生まれてくるはずだ。 もちろん、潜入でなくとも取材はできる。けれども、書かれることが前提の取材となると、相手はできるだけいい人に書いてもらおうと努める。書かれることが前提ならば、誰だって取り繕う部分があっても不思議ではない。 そうした姿もウソではないが、その人の表層的な一面にすぎず、どうしても美化したものとなる。つまり、外面だ。 しかし、取材とは告げずに、その人の行動や言動を至近距離から観察したらどうなるだろう。正面からの取材とは別の側面が見えてくることがある。外面の下に隠された本当の姿までが表れてくることがある。その人の飾らない姿が浮き彫りになるのが潜入取材の魅力であり威力でもある。