大阪王将「ナメクジ大量発生」投稿事件。“話題の告発者”から“被告人”になったワケ
被告人が裁判で語ったこと
被告人は、現在別件で実刑判決を言い渡されて受刑中の身。法廷には刑務官らに連れられ、黒色のジャージ姿で現れた。 冒頭の罪状認否の場面で、裁判官から起訴内容に争いはあるかと聞かれ、ハキハキとした声で「私は何らかの業務を妨害したことは認めますが、ウソの発言をしたことは認めません」と述べた。 その後、弁護人は意見書を陳述。弁護人も「偽計業務妨害罪の成立は認めます。しかし、被告人は存在していない事実を存在しているように装ってはいません」と主張。検察側からは「無罪主張なのか」と問われる場面もあった。
弁護人に取材した結果
だが、弁護人は無罪主張ではないという。閉廷後、傍聴人からは腑に落ちないという疑問の声があがった。そこで、筆者は弁護人を取材。弁護人は取材に対して、次のように説明した。 「偽計業務妨害罪の成立は認めます。弁護人としては、『偽計』にはウソをつくことだけではなく、たとえ投稿が事実であっても社会通念上許されない手段で告発したことも含むと考えています。本件の告発方法はSNS上であり、度が過ぎているため『偽計』の成立は認めます。ただ、起訴内容で読み上げられたウソとされる投稿については、被告人はウソをついていないと考えていますので、一部否認という形になりました」
内部告発者は保護されないのか
今回は、「偽計業務妨害罪」での起訴。同罪は、人を欺く内容の「偽計」を用いて、業務を妨害する行為を成立要件としている。確かに、一連の投稿には証拠写真付きのものもあるが、そこに写っているナメクジは1匹ほど。検察側は、「大量にいる」と誇張して投稿した点が「偽計」に当たり、その嘘を利用してフランチャイズ契約の解除に至らせて金銭的な損害を与えたと判断して公判請求をした。 では、告発者は保護されることはないのだろうか。 被告人を擁護する声の中には、「公益通報者保護制度」を指摘するものも多数存在している。「公益通報」とは、事業者の法令違反行為を知った従業員が組織内の通報窓口や行政機関などに通報することであり、通報者に対しては解雇や減給、損害賠償請求などの不利益な取扱いを禁止する制度である。 ただし、被告人は保護対象外なのだ。被告人の告発の動機は「店舗側に対する腹いせ」と認められ、悪意がある。そして、「公益通報」の要件として、通報先は「事業者内部」や「権限を有する行政機関」などと定められているが、被告人はSNSに投稿して不特定多数に晒してしまった。