ついに始まる“自動車”の再定義 変化する自動車と人、そして社会の関わり
消費から生産へ、エネルギーと人との関わりが変わる
2014年12月にトヨタが燃料電池車(水素自動車)「MIRAI」を発売したことは記憶に新しいところですが、電気自動車や燃料電池車など、環境負荷がないゼロ・エミッション技術は今後も更に拡大していきそうです。しかし、こうした技術は“環境負荷をなくす”という目的のためだけでなく、自動車そのものを家庭用電源として活用していこうという動きが見られます。 例えば、トヨタが発表したコンセプトカー「FCV PLUS」は水素燃料から電気を発電するという仕組みを活かして電気を家庭に供給できるという「エネルギー・カー」をコンセプトに開発された車両。水素エネルギーであればエンジンを運転し続けても排ガスを一切出さず騒音もほぼないため、トヨタやホンダが開発に力を入れる燃料電池車は、自動車が一家に一台の“自家発電装置”として位置付けられる日が訪れるかもしれません。 また日産自動車などが推進している電気自動車も、非常時の蓄電池として生活の中で重要な役割を果たすことでしょう。自動車がエネルギーを消費する存在から、生活に必要なエネルギーを生み出し、蓄える存在へと変化していくのです。
パーソナル・モビリティの発展が自動車社会を変える
未来の自動車社会にとってもうひとつの重要なキーワードが「パーソナル・モビリティ」。これまでの自動車は、5人乗り、7人乗りが一般的ですが、1人や2人で乗る超小型の自動車が普及すれば、私たちの日常の移動手段が大きく変わるかもしれません。小回りがきいて手軽に利用できるパーソナル・モビリティは、自転車やバイクに置き換わる存在になる可能性を秘めているのではないでしょうか。 例えば、ホンダはこのパーソナル・モビリティと自動運転技術を組み合わせて、新しい社会交通システムを提案しています。「HONDA WONDER STAND CONCEPT」は、ナビゲーションシステムに連動した自動運転技術によって、土地勘のない観光客を案内する移動手段としての活用を提案。知らない場所を案内してくれて街の魅力を体験することができる、まるで未来版“人力車”のようなイメージです。ナビゲーションで多言語の案内を提供すれば、今後日本で増加する外国人観光客にとって利便性の高い交通システムを提供することが可能になるかもしれません。