ヤマトHDが上期150億円赤字転落の苦境、アマゾンら大口法人との値上げ交渉不調の影響か 残業規制でドライバーも「そりゃボーナスも減るよね」と諦め顔
日本の物流を担い、「クロネコヤマトの宅急便」で知られるヤマトホールディングス(HD)が、赤字転落の苦境に喘いでいる。その背後では、世界最大のネット通販事業者であるアマゾンとの関係に緊張が走っている事情があるという。サービスを享受する利用者にとっても、決して見過ごせない事態が表面化しつつある。
頼んだ荷物が届かない!
クリスマスや年末年始のために注文した商品が、待てど暮らせど届かない。「配達が遅くなって申し訳ありません」。そう言いながら宅配ドライバーが荷物を持ってきたのは、年が明けた1月初旬──。 各地でそんな事態が起きたのは2016年末のこと。 ネット通販の普及で荷物が急増して配送の人員確保が追いつかず、予定通りに荷物が届けられない「パンク(遅配)」状態となったのだ。物流ジャーナリストの刈屋大輔氏(青山ロジスティクス総合研究所代表取締役)が言う。 「荷物が急激に増えすぎた影響で、ヤマトHDでは従業員の長時間労働や過重労働が常態化。2016年には残業代の未払い問題が発覚し、翌年に残業未払い分として計230億円を支払いました。問題の是正のため、ヤマトHDは大口顧客の荷物の受け入れ量を抑制する『総量規制』と、運賃の大幅値上げを実施しました」 従来の運賃やスケジュールで配送できなくなる事態は「宅配クライシス」と呼ばれた。今、ヤマトHDにこの時以来の危機が訪れようとしている。
11月5日、ヤマトHDが発表した2024年度上期の連結決算は、売上高(営業収益)が前年同期比3%減の8404億円、営業損益は150億円の赤字に転落。2025年3月期の通期予想も見直され、営業収益、営業利益ともに4期連続で下方修正した。 栗栖利蔵副社長は会見で「お客さんとの交渉で単価アップが見込めず、収益が追いつかなかった」と発言したが、ヤマトの収益を左右する最大の顧客がネット通販大手のアマゾンジャパンだ。 「年間7億個超といわれるアマゾンの商品の約4割は外部業者によって届けられており、その大半はヤマトが担っているとされる。3億個前後だから、ヤマトが取り扱う年間約18億個の2割弱になる」(経済紙記者) そうした背景を踏まえて、刈屋氏はこう言う。 「アマゾンをはじめとする大口法人顧客との契約運賃の値上げ交渉が思うように進んでいないことが、業績悪化の原因になっていると考えられます。交渉がまとまらなかった場合、繁忙期となる年末の就労条件の悪化を招くことになれば、年明け以降の離職者増加にもつながりかねません」 残業規制を中心とする物流の「2024年問題」の影響もあり、宅配業界はドライバー不足が深刻な状況だ。年末年始に向けて刈屋氏は「宅配クライシスの再来も大いにあり得る」と警鐘を鳴らす。