「頭が真っ白に」母の本音…ヤクルト2位指名、モイセエフ・ニキータの“ドラフト裏話” 密着記者が目撃した指名直前「監督とのあるやり取り」
モイセエフの顔は強張っていった
これでもし指名されなかったら……。一抹の不安がよぎる。だが、事前の予想では上位指名の公算が大きいとされていた。焦点はむしろ、何位でどの球団に指名されるか、だ。 17時、いよいよドラフト会議の中継がスタートした。なごやかな雰囲気から一転して、豊川高校の会見場も緊張感に包まれる。 1巡目で宗山塁(明治大)が5球団、金丸夢斗(関西大)が4球団、西川史礁(青山学院大)が2球団から指名を受ける。単独指名はヤクルトの中村優斗(愛知工業大)のみ。「第1巡選択希望選手……」と読み上げられるたびに、モイセエフの顔がすこし強張っていくように見えた。膝の上においた両拳も、ぎゅっと強く握られている。 中日の井上一樹監督が金丸の交渉権を獲得し、左腕を振り上げた瞬間、地元ということもあってか野球部員たちから「おおー」と声があがる。抽選を外した各球団の1位がふたたび読み上げられていく。モイセエフはじっとスクリーンを見つめている。 12球団の1位指名が確定し、会見場が一度、緊張から解放される。隣に座っていた長谷川監督が、見るからに硬くなっていたモイセエフの肩をポンポンと叩く。なにごとか短い言葉をささやくと、年齢相応の笑顔が戻った。
指名の瞬間、大歓声で会見場の空気が…
17時50分、2巡目の指名がスタートした。ここからは今季順位に基づいたウェーバー制だ。指名された瞬間に交渉権が確定する。西武、渡部聖弥(大阪商業大)。中日、吉田聖弥(西濃運輸)。オリックス、寺西成騎(日本体育大)。モイセエフは感情を押し殺してスクリーンを見つめる。 「第2巡選択希望選手、東京ヤクルト。モイセエフ……」 その瞬間、会見場の空気が震えた。大歓声にかき消されて、後に続くはずの「……ニキータ。外野手、豊川高校」は聞こえない。カメラのフラッシュが焚かれ、この日一番の拍手が起こる。長谷川監督と握手をかわすモイセエフ。派手なリアクションはない。それでも、喜びは隠しようがなかった。 そういえば、前日の取材でモイセエフが言っていた。同じ左バッターとして「村上(宗隆)選手のバッティングを生で見てみたい」と。さらにOB会の林さんの言葉がリフレインする。「なるべく上位で、できれば球場の小さいところがいいなあ」。明治神宮大会ではホームランも放っている。ヤクルトの2位は、本人にとっても100点満点と言っていいだろう。
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