飛びたくても飛べない……広がる航空燃料不足の背景にある構造的問題
政策アナリストの石川和男が7月14日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送Podcast番組「石川和男のポリシーリテラシー」に出演。成田空港をはじめ国内空港で相次ぐ航空燃料不足の原因と今後の見通しについて、専門家と議論した。
成田国際空港会社は6月27日に開いた会見で、国内で航空燃料を調達できないとして、海外の航空会社が成田空港への新規就航や増便を断念していると明らかにした。6月19日から26日までの1週間では、中国などアジアの航空会社が計画していた就航便あわせて57便に影響が出たとしている。燃料不足で就航できないケースは、すでに地方空港で相次いでおり、成田空港にも影響が広がった格好だ。 この問題について、ゲスト出演した一般社団法人エネルギー情報センター理事の江田健二氏は「ついに来たかという印象。去年ぐらいから言われており、どんどん伸びるインバウンド需要に、ついに追いつかなくなってきたかというイメージ」と述べた。 その上で、今後の対応について「国は石油元売り会社や航空会社とともにタスクフォースの委員会を立ち上げ、何とか切り抜けようと話し合っている。短期的な需要には、例えば輸入などで対応できるが、この問題が根深いのは国が掲げる2030年のインバウンド目標6,000万人という話。この需要に応えるには、国内製油所の精製能力や輸送能力を見直す必要が出てくる」と指摘した。 航空機に必要なジェット燃料は、原油を精製する過程でガソリンや軽油、灯油やLPガスなどとともに約1割が生み出される。ただ、脱炭素の流れを受けて自動車のEV(電気自動車)化が進むなか、ガソリンや軽油などの消費やガソリンスタンドの需要が減り、国内の石油精製所は経営合理化の一環で統廃合が進む。 江田氏は「ガソリンの需要が減っているので、石油元売りは製油所や人材を減らしている。ここに来て、いきなりジェット燃料だけ足りないから作ってくれと言われても大変だ」と言及。代替燃料として期待されているSAF(廃棄物や再生可能な原料から作られる航空燃料)も、価格がまだ既存燃料の3~5倍で、生産体制が整い価格が落ち着くと予想される2030年頃まで「どうしのぐかが課題だ」と指摘。当分は、不足分を輸入に頼ったり、国内空港の中で優先順位を決めて融通しあうなどの対策例を挙げた。 石川は「脱炭素、カーボンニュートラルという国際的な大きな流れは理解できるが、そればかりをあまり早く進めてしまうと、結局困るのは日本人。日本人が困らないようなスピード感で進めていかないと、日本社会がつぶれてしまう」と持論を述べた。