"脱根性バレー"で歩み始めた新生男子バレー代表
公開練習を終えた体育館に選手たちの笑い声が響く。「歯を見せるな」が監督の方針だった前代表では決して見られなかった光景だ。5月21日、6月に開幕する男子バレーボール・ワールドリーグに臨む全日本チームの記者会見と公開練習が味の素ナショナルトレセンにて行われた。今年4月、男子バレーは代表史上初めて、外国人監督のゲーリー・サトウ氏を招へいして話題となった。その新たな指揮官が掲げたテーマは、準備を整えて試合に臨む「スマートバレーボール」である。 Vプレミアリーグで新人賞に輝き、今回シニア代表に初めて選ばれた千々木駿介は語る。 「すべての練習はゲームにつながらなければ意味がないというのが監督の口癖です。練習は合理的で無駄がありません。個人のスパイク練習はなく、いきなりセッターとアタッカーのコンビネーション練習に入ります。それに、練習時間のほとんどをゲーム形式の練習に費やしています。まだ集まって数日ですけど、自分がバレーボールを始めてからこれほどゲーム練習ばかりするのは初めてですね」。 昨年、全日本男子がロンドン五輪出場を逃したあと、日本バレーボール協会は男子代表監督を広く国内外に向けて公募した。20人の応募があり、そのうち8人が外国人だった。「男子は40年間メダルを逃している。本当にもうあとがない」と日本バレーボール協会の中野泰三郎会長は初めて外国人監督に門戸を開いた経緯を話す。 「サトウ監督は日本チームについて緻密な分析をして、強化方法を提案してきました。特に日本の弱点が、連続失点の多さとブロックにあることを指摘し、この2つを改善すれば各セット2~3点の失点を減らせるとリポートには書かれていました。しっかりとしたデータによる裏付けには説得力がありました」。 サトウ監督はアメリカ・カルフォルニア州の出身。アメリカ代表でコーチを務めソウル五輪で金メダル、バルセロナ五輪で銀メダル獲得した実績を持つ。選手個々の能力もさることながら、アメリカ代表チームはその情報収集と分析力の高さで近代バレーをけん引してきた。