『東京タワー』4人が辿り着いたそれぞれの最適解 永瀬廉と板谷由夏によるアンニュイな魅力
人混みの中で号泣しながらお互いの気持ちをぶつけ合った耕二(松田元太)と喜美子(MEGUMI)
透と耕二(松田元太)が“失恋記念”を自虐的に祝う裏で、実は詩史と喜美子(MEGUMI)が繋がっていたことも明かされた。「一番美しい思い出でありたい」という詩史の言葉を喜美子は彼女のやり方で貫いた。全てを「耕二のせい」「出会わなければよかった」としていたところから、自分たちが共犯だったことを認め、別々の道に進むように面と向かって伝えられていた。 本作で透×詩史ペアを演じた永瀬廉と板谷由夏は、互いにどこかに常に寂しさが付き纏い続けるアンニュイな存在感を見せてくれた。彼らが年齢も所属も超えて強く惹かれ合った必然性がそこにはあることを、説得力を持って示してくれていた。 別れ際にこそ人の本性が出るとはよく言ったもので、その応酬は互いからなおも吸い込まれるような吸引力が発揮されていた。 透と詩史が人知れず静かな涙を流し、互いの気持ちを知った上で最後のデートに臨んだのに対し、人混みの中で号泣しながらお互いの気持ちをぶつけ合った耕二×喜美子も、その終わり方には“らしさ”が満載だった。なし崩し的に始まったもののその全てが本気だったことに後々気づいてしまったからこそ、決着をつけるのにもオーディエンスが必要だったのかもしれない。別れ際に喜美子がぶつけた言葉の節々から溢れ出る優しさや感謝、そしてそれを2人にしかわからない形で受け取った耕二のやり取りにも、やっぱり2人が惹かれ合う運命だった必然性が滲んでいた。 透の中で“世界で一番悲しい景色”が“世界で一番好きな景色”に変わったように、決して人から褒められた恋ではなくとも、自分を見失うほどにのめり込み溺れてしまった恋を経て、その地続きにそれぞれの“現在地”がある。いつだって変わらず見守ってくれた東京タワーの下、4人がそれぞれにこの恋を経て辿り着いた現在地を大きく育てていけますように。
佳香(かこ)