〈台風10号〉「大丈夫」一転「直撃も」…今季初の台風接近 のろのろ動き不安定な進路に、離島住民不安と焦り
勢力を強めながら鹿児島県に接近しつつある台風10号。当初予想より西寄りに進んだ26日、影響が懸念される離島では備えを急ぐ住民の姿が見られた。「直撃コースになるとは」「スピードが遅いのが気がかり」。今季初めて襲来する台風は進路が不安定で、焦りや不安がにじむ。 【写真】台風に備え、ロープで漁船を固定する漁師=28日午後1時15分ごろ、西之表市の西之表港
西之表市の各港では漁師が船の固定に追われた。種子島で「アカバラ」の名で知られ、1キロ1500円以上で取引されるカンパチを狙える時季。浦田漁港の伊東恭三郎さん(66)は「のろのろ台風でいつまでたっても船が出せなくなるのが一番困る」と話した。 島の基幹産業の農業分野も危機感が強まっている。サトウキビはまだ茎が固まっていない。中種子町野間の梶屋良幸さん(74)は「葉の裂傷であれば回復するが、折れたらだめになる。対策がないのがもどかしい」とぼやいた。 今回の台風は時速10キロと遅いのも特徴だ。物資輸送を担う船舶の運休が長引けば、生活への影響も大きくなる。西之表市のスーパー「サンピア」の岩坪敬也店長(47)は「消費期限が長い飲料やパン、カップ麺のほか、電池なども多めに発注したが、不足が出る可能性もある」と心配する。 種子・屋久には28日から29日にかけて最接近するとみられ、各自治体とも27日中に避難所を開設する方向で調整中だ。屋久島町では27、28日、各登山口に向かう路線バスの運休が決まった。町も防災無線などを通じ、登山の自粛や停電への備えを呼びかけている。
台風の進路が西寄りになったことで、奄美大島でも警戒感が強まった。龍郷町赤尾木の自営業黒岩久光さん(75)は、窓枠に板を打ち付けるなど急いで家周りを補強。「大丈夫と思っていたので慌てた。何も被害がないことを願うしかない」と語った。
南日本新聞 | 鹿児島