“表現者”前田佳織里が目指すもの、2nd EP『Grab the World』に投影した内面と人生を語る
結局どんなことも「やるかやらないか」
──前回インタビューさせていただいたときに「夏のタオル曲が欲しい」とおっしゃっていましたが、2曲目の「Dream’s Top Star!!」はまさにその位置づけではないでしょうか。 そうなんです! コールアンドレスポンスもできる、念願のライブで盛り上がる曲ができました。もともと海外のロックが好きなのもあって、今作にはそういうテイストの曲も入れたかったんですよね。コロコロと表情が変わる曲ですし、歌詞も真っ直ぐなところがすごく好きで、歌っていて面白いです。 ──2曲目から3曲目「最後の花火が上がる頃に」のギャップも、前田さんの表現者としての振れ幅がわかりやすく出ていると思います。 ああ、うれしい。曲順はわたしの意見を取り入れていただいたんです。個人的にも3曲目でガラッと空気を変えたくて。前田スタッフの皆さんがめちゃ寄り添ってくださるので、本当に感謝しかないですね。「最後の花火が上がる頃に」は1st EPの「花香リ春薫ル」の春ソングに続き夏ソングを入れたいねという話から、また田中隼人さんに制作をお願いしました。もともと花火にまつわる曲が大好きなので、念願でしたね。自分が少女漫画の主人公になった気持ちで歌いました。ラブソングを歌うのは初めてなので、これも面白かったです。 ──ではこの曲の主人公は、前田さんの人間性とはまた少し違う人物像ですか? うーん、どうでしょう…? でもわたしの記憶にあるお祭りの温度感はリアルなものですね。地元の小倉祇園太鼓というお祭りを思い出しながら「こんな空気感だったな」「ガヤガヤしてたな」「あの頃の夏はそこまで暑くなかったな」とか、いろんな思い出を蘇らせて、主人公の心情とリンクさせながら歌いました。 ──EPのラストに前田さんの人柄がクリアに出た「Stranger」が置かれているのも、「アーティスト前田佳織里」の作品としていい締めくくりだと思います。 「Stranger」はおしゃれできらびやかな都会で、上京してきたわたしががむしゃらに頑張っているというイメージで歌っているんです。サウンドはおしゃれでキラキラしていて華やかなんだけど、歌詞はいい意味で結構泥くささがあるんですよね。根性は普段からわたしが大事にしてることでもあるので、夢を掴み取るために上京してきたときの自分をいつまでも忘れない、あの頃の自分に戻れる曲だと思っています。 ──今作はさらに前田さんの人生を深掘りした曲たちなのかもしれないですね。 本当にありがたいですね。1st EPで楽曲提供をしてくださった作家の皆さんが2nd EPにも参加してくださって、皆さん等しく情熱や愛情を持ってくださっているな……といただく曲やSNSを通して感じるんです。お会いしていない方とも通じ合っている感覚があって、本当にわたしは恵まれているなと噛み締める毎日です。 ──声優活動や音楽活動だけでなく、役者業、バラエティ、日本酒プロデュースなど様々なフィールドで活躍している前田さんですが、今後もその幅は広げていくのでしょうか? 毎日いろんな現場に行けるのは刺激があって楽しいので、どんどん挑戦していきたいですね。日本酒のプロデュースもファンの皆さんのご意見を取り入れながら細かいところまで考えて味を決めるのがすごく面白いんです! 初めてのことに挑戦するときは右も左もわからないけど、自分で勉強をして最終的にその感覚が掴めたときにすごく充実感があるんですよね。できないことがあったときは自分なりにできない理由を掘り下げて、それをできるようにしていくのが昔から好きで。そこまでの道のりを逆算すると「ああ、これ少なくとも○ヶ月はかかるな」みたいにすごく考えちゃうこともあるんですけど(笑)。 ──でも前田さんはそこで諦めない。 そのぶんできたときは楽しいし、その経験が増えていくと「自分はこれだけやればできる」というある程度の目安もできてくるから、できるようになるためにやることもはっきりしてくるんです。だから結局どんなことも「やるかやらないか」なのかなって。これからも一つひとつがむしゃらに頑張っていきたいです。 ──そのバイタリティがあれば、前田佳織里は「表現者」としてどんどん力を発揮していきそうですね。 どんなフィールドで活動するとしても、エンターテイナーでありたいと思います。そのためにはどんなことも基礎がちゃんとしていないとできないので、そこをしっかり固めながら広げていきたいですね。一見関係ないと思うものも全部表現には活かせるし、つながっていると思うんです。すべての人生経験で、前田の表現者としての戦闘力を上げていきます!(笑)。 ◎取材・文/沖さやこ ◎編集/小島靖彦