「私からすると信じられない」難しいバンクを攻略した阿部将大に帝王・山田裕仁氏が驚き/高知競輪G3・決勝レース解説
ここでちょっとだけ脱線すると、私は仕掛けどころが難しいこの高知バンクが、どちらかといえば苦手な部類だったんですよ。この展開、この脚の残り方ならば捲れる…と思っても、自分が考えているようには伸びず、前を捉えきれなかったりするんですよね。いわば、自分の感覚との“誤差”が出やすいバンクとでもいいますか。500mバンクながら、最後の直線が長いわけではないというのも、そう感じる理由かもしれません。 高知バンクを「難しい」と感じるのは私だけではないはずで、それは決勝戦での戦略や戦術にも影響してくるでしょうね。犬伏選手はいったん引いてからのカマシのほうが得意ですが、ここは積極的に主導権を奪いにくる可能性が高そう。新山選手も主導権を奪って、唯一の3車ラインという“数の利”を生かすレースをしたいでしょうから、初手の並びがどうなるかが超重要。まずは、そこに注目しましょう。
号砲が鳴り、いい飛び出しみせる阿部将大
では、決勝戦のレース回顧に入ります。レース開始を告げる号砲が鳴って、いい飛び出しをみせたのが8番車の阿部選手。いったんは完全に前に出ますが、内から追いかけてきた1番車の犬伏選手を前に出して、自分はその直後に収まりました。これで中四国勢の前受けが決まって、直後の3番手に阿部選手。北日本ライン先頭の新山選手は5番手となり、後方に単騎の深谷選手と坂井選手というのが、初手の並びです。 その後はとくに動きがないまま周回が進み、赤板(残り2周)を通過。後方の単騎勢が動くケースもあるかと思っていましたが、赤板後の1センターを通過してバックストレッチに入っても、動きはありません。最初に動いたのは北日本勢で、新山選手は打鐘の手前から前に踏み込んで加速。しかし、それを振り返って確認した犬伏選手は、合わせて踏んで突っ張り先行の態勢に入ります。
いったんは清水選手の外まで浮上した新山選手ですが、犬伏選手が突っ張ったことで素直に引いて、後方に下げます。その間に、後方にいた単騎の深谷選手と坂井選手はポジションを上げて、中団の位置を確保。新山選手は後方7番手となって、一列棒状となって最終ホームに帰ってきます。突っ張った犬伏選手は、新山選手が引いてくれたのもあって、流しつつ最終ホームを通過。そしてここから、一気に全力モードにシフトします。 一気にペースが上がり、一列棒状のままで最終1センターを回って、最終バックストレッチに進入。清水選手は犬伏選手との車間をきって、後方の仕掛けを待ち構えながら追走します。しかし、犬伏選手の逃げがかかっているのもあって、後続が前との差をなかなか詰められない。最終バック通過時もまだ一列棒状のままで、後方に置かれる展開となってしまった新山選手は、もうこの時点でかなり厳しいですよね。