髪を憧れの赤色に「もっと頑張って働ける」 小売業でも従業員の髪色自由・ネイルもOK 「否定的な人もいるが…」個性の尊重で人材確保
「どこまで緩和していいか…」悩む事業者も
ニシザワ(伊那市)は「具体的には取り組んでいないが、検討したい」(人事課)と説明。人手不足で採用が難しくなっており、働きやすい環境の整備が必要になっているとする。
一方、別の小売業の担当者は、髪色の自由化などは「時代の流れだが、年代によっては否定的な人もいる」と指摘。客が業界に求める理想像とのはざまで「どこまで緩和していいか悩んでいる」と打ち明けた。
「みだしなみ自由化」 人手不足が背景に
全国で拡大する髪色など身だしなみの自由化の波。専門家が背景として指摘するのは、新型コロナウイルス禍で採用を絞った各社が一斉に人材確保にかじを切ったことなどによる人手不足だ。
労働市場の調査・研究を行うジョブズリサーチセンター(東京)の宇佐川邦子センター長は、特に食品を扱うスーパーなどで、「清潔感や規律を印象づけるため、画一的な服装や髪色を従業員に求めてきた」と説明。新型コロナ感染症が落ち着き、採用活動を再開しても思うように人材が集まらない実態があるとする。
全国では仕事はあっても従業員が確保できず倒産したり収益が悪化したりする企業も出始めている。宇佐川センター長は「さまざまな現場で人手不足は限界にまで達している」と指摘する。
大手の基準緩和が先行 業界・地域を超え拡大か
スターバックスコーヒージャパン(東京)やドン・キホーテ(同)といった大手が基準緩和で先行し、現在も改定の動きが相次ぐ。日本マクドナルド(同)は今年9月から緩和。従来は「自然な髪色」と規定していた。試験導入した大阪市の店舗ではアルバイトによる友人の紹介が増加し、4月の採用は前年の約3倍に上ったという。アミューズメント施設運営などのイオンファンタジー(千葉市)も今月から改めた。
宇佐川センター長は、大手の「モデルケース」が増え、県内企業にも波及しているとみる。「多様な人が活躍できる社会の実現に向けた大事な兆しだ」と評価した。
髪形やネイル、メークなどはアイデンティティーの一部として捉えられるようになっている。従業員や求職者らは「自分を変えてまで働きたくないと感じるようになっている」とし、人材獲得競争が激しくなる中で基準の見直しは「今後さらに業界や地域を超えて広がっていくのではないか」と見通した。