竹中平蔵氏「自民党総裁選、『この国のかたち』を問え」
世代交代の意義
こうした未来志向を持った行政改革なしに当面の対症療法のみにとどまれば、日本の経済社会はやがて決定的な行き詰まりに直面するだろう。30年代になればガソリン車が買われなくなり、現在の主力である自動車産業は大きな受ける受ける可能性がある。そして日本の高齢者人口は全体の3分の1を占める。世界では、中国やインドが米国に匹敵する圧倒的な存在感を持つかもしれない。 抜本的な政策改革を通常の政策プロセスで行うのは、容易ではない。政府では所管省庁が政策立案し、審議会に諮り、場合によってはパブリックオピニオンを求める必要がある。それと並行して与党の側では、各部会、政調会、総務会の手続きを経なければならない。この場合、それぞれのプロセスで多くの時間を要し、多様な利害の調整を図らねばならない。しかし、総裁選において候補者が公約を掲げその候補が選ばれたなら、同氏の公約は必ず実行に移される。菅義偉総理が誕生した際、総裁選でデジタル庁の創設を掲げこれが直ちに実行されたのは、分かりやすい例だ。だからこそ総裁選では、通常のプロセスではなかなか実現できないような、抜本的な改革案を示してもらいたい。憲法改正なども、その中に入ってしかるべきだ。 かつて司馬遼太郎氏は、『この国のかたち』という名エッセーを記した。ここ数年続いてきた対症療法的な政策ではなく、新しい「この国のかたち」を真摯に考えるような、意味ある総裁選を期待したい。
竹中 平蔵