課題を修正した長崎総科大附が元Jリーガー率いる新鋭校を撃破!! 小嶺忠敏氏が最後にスカウトした世代が決勝の舞台へ:長崎
[11.3 選手権長崎県予選準決勝 長崎総科大附高 3-1 九州文化学園高 トランスコスモススタジアム長崎] 【写真】影山優佳さんが撮影した内田篤人氏が「神々しい」「全員惚れてまう」と絶賛の嵐 同じ轍は踏まない――。自分たちの課題と向き合い、完璧な入りで相手を寄せ付けなかった。 3日、全国高校サッカー選手権の長崎県予選準決勝が行われ、長崎総合科学大附高は福岡や長崎などで活躍したFW有光亮太氏が率いる九州文化学園高と対戦。初の4強入りとなった新興校を3-1で下し、17日の決勝に駒を進めた。 ゲームプランは明確だった。「立ち上がりが勝負」。定方敏和監督が選手に檄を飛ばしたように、試合の入り方に最新の注意を払った。もちろん、「時間が経てば、相手も前からどんどん来るし、調子が上がってリズムにも乗ってくる」ということも理由の一つだが、今予選の過去2試合で前半のうちに先制点を献上していることが大きい。特に準々決勝の海星戦は開始5分で失点を喫している。いずれの試合も逆転勝利したとはいえ、早々に崩れる傾向があったため、この日の長崎総科大附は序盤からギアを上げていくことを心掛けた。 狙いは見事にハマり、キックオフ直後の2分にいきなりゴールをこじ開ける。セットプレーの流れからボランチのMF宇土尊琉(3年)を経由し、最後はFW坂本錠(3年)が右足でスライディングシュートをねじ込んだ。 過去の反省を生かしたチームは早々にリードを奪うと、以降は落ち着いた試合運びで主導権を掌握。MF高橋駿介(3年)と宇土のダブルボランチが汗かき役を担い、豊富な運動量でセカンドボールを回収。球際の守備も強度が高く、ショートパス主体で攻め込んでくる九州文化学園につけ入る隙を与えない。ミドルゾーンを破られてもDF角田碧斗(3年)とDF島田俐亜武(3年)のCBコンビを中心に跳ね返し、相手に決定機を作らせなかった。 1-0で迎えた後半も集中力を切らさず、粘り強い守備と縦に速い攻撃でゲームを優位に運んだ。後半の半ば以降は相手に押し込まれる時間帯が増えたものの、GKマガリェンス・アルナウド(3年)が安定したセービングで得点を許さない。なかなか追加点を奪えなかったが、39分に裏に抜け出した坂本が右足で冷静に決め、勝負の行方を決定的なモノにする2点目を奪う。40+1分には左SB小手川蓮(3年)の右CKから島田が押し込んで加点。直後に九州文化学園のFWサイク・ハンター夏壱(3年)にゴールを決められたが、攻守で相手を圧倒して凱歌を上げた。 選手権出場まであと1勝。王手をかけた長崎総科大附だが、今季は春先から苦戦。1月下旬の県新人戦では準決勝で国見に1-2で敗戦。九州大会出場を逃すと、6月のインターハイ予選でも決勝で国見に0-1で敗れた。だが、チームはプリンスリーグ九州1部で揉まれ、タフに戦える集団に変貌。「リーグ戦は大きい。毎週のように緊張感がある」と指揮官が話した通り、ハイレベルな戦いの中で研鑽を積んだ。 確かな成長を見せるチームだが、今年の3年生は22年1月に亡くなった小嶺忠敏前監督が生前最後にスカウトした世代でもある。小嶺氏が逝去する1か月半前に練習へ参加したGKのアルナウドは当時の所属クラブでは控えに甘んじていたが、ウォーミングアップで「あいつ、いいねぇ」と興味を示されたプレーヤー。他にも「小嶺先生のもとでサッカーがしたい」という想いで入学した選手は多い。 一緒にサッカーをすることは叶わなかったが、着実に小嶺イズムは引き継がれている。最後の冬に笑うべく、小嶺氏が最後に関わった世代が2年連続の選手権出場を果たせるか注目だ。 (取材・文 松尾祐希)