『なのは』水樹奈々、『神無月の巫女』KOTOKO……“現代アニソン黎明期”は2004年秋が起点に?
10月5日に、2004年放送のアニメ『舞-HiME』(テレビ東京系)の放送20周年を記念したPVが公開された。 【ライブ写真】『KING SUPER LIVE 2024』より水樹奈々&水瀬いのり ツーショット “サンライズ初の萌えアニメ”というキャッチコピーを掲げて始まったものの、ヘビーなバトル作品だったこともあり、結果的に“燃え“の割合の方が高かった本作。ストーリーが異なるパラレルな世界観でメディアミックスを展開したり、キャラクタースターシステムを採用した後継作が作られたりするなど、挑戦的な試みとなった『舞-HiME』プロジェクトの第1作は、現在でも多くのファンが存在する人気作だ。『舞-HiME』の音楽部分を振り返ってみると、主題歌をランティスの歌姫である栗林みな実と美郷あきが務め、劇伴には作曲家・梶浦由記を起用。主題歌やキャラクターソングのクレジットには、畑亜貴、飯塚昌明、奥井雅美、影山ヒロノブに加え、当時は若手で活躍していた上松範康、黒須克彦、太田雅友などが並んでおり、今振り返ってみると音楽的にもかなり豪華な面々であったのだとわかる。 実は、20年前の2004年秋クール、またはその周辺のアニメは、現在でも話題にあがる作品やアニソンが多く、その歴史においてもトピックとしてピックアップしておきたい作品がいくつもある。楽曲の内容と作品がリンクしないタイアップものが多くなっていた90年代のアニソンの反動として、00年代以降のアニソンは「アニメの世界観と音楽性の両立」が1つのキーワードとなり、作品と親和性の高い楽曲が多く生まれることになる。中でも、現代のアニソンの基礎に繋がる流れを作ったとも言える、いわゆる“現代アニソン黎明期”的な楽曲や要素はこの頃に多く誕生している。現代アニソンの歴史と現在までに至る流れも踏まえながら、当時の作品と楽曲を振り返ってみよう。 まず、2004年秋クールのアニメとして真っ先に挙げられる作品が、『魔法少女リリカルなのは』(独立UHF局)だ。2004年、2005年、2007年、2015年、2016年にスピンオフ作品も含めてTVアニメが合計5期放送され、、2010~2018年にわたって4つの劇場版アニメも公開された人気シリーズで、こちらも今年の10月頭から20周年プロジェクトが展開中。TVアニメの主題歌はすべて、同作で主演を務めた水樹奈々がOPテーマを、田村ゆかりがEDテーマをそれぞれ担当している。 水樹による第1期OPテーマ「innocent starter」は、浮遊感のあるミドルテンポの優しい雰囲気が特徴の1曲。そして田村の歌う第1期EDテーマ「Little Wish ~lyrical step~」は、魔法少女のポジティブで明るい部分を前面に押し出した楽曲で、田村の可愛らしい歌声とのマッチングが絶妙だ。 水樹奈々と田村ゆかりーーこの2人は現代アニソンを語るにあたって欠かすことのできない存在と言ってもいいだろう。まず、水樹の楽曲の特徴といえば、速いテンポで転調を何度も駆使したキャッチーなメロディ、そしてストリングスを入れたシンフォニックロックテイストだが、それらを印象づけたのが2005年に放送された第2期『魔法少女リリカルなのはA's』(サンテレビほか)のOPテーマ「ETERNAL BLAZE」であることは間違いない。オリコンウィークリーランキングで声優楽曲として当時の歴代最高記録となる2位を記録し(※1)、今でも彼女のライブのほぼすべての公演で歌われるほど、水樹の代表曲として世間に認知されている楽曲だ。「ETERNAL BLAZE」のヒット以降、この楽曲を提供した上松、そしてElements Gardenとのタッグが徐々に増えていき、彼らの提供する楽曲の雰囲気が水樹の人気上昇とともに現代アニソンの特徴の1つとして後世にも影響を与えていくことになる。 そして田村といえば、カリスマ性に優れた声優として有名だ。“ゆかり王国”、“王国民”という言葉が知られているように、ライブの存在が欠かせない現代アニソンにおいて、アニソン/声優ライブの存在、そして声優ライブのハイレベルさ、熱狂性、エンタメ性を世間に行き渡らせたのは彼女の功績が非常に大きい。もちろん、ポップでキュートなラブソングから、ジャズ調の大人な雰囲気まで自在に歌いこなす歌唱力、表現力など、楽曲のみならず彼女のテクニックへの評価が高く、のちに彼女に憧れた世代がアニソンを歌うなど、フォロワーも数多いのだ。 水樹と田村を紹介したならば、やはり堀江由衣にも触れるべきだろう。堀江由衣の代表曲の1つである「スクランブル」は、2004年秋クールより放送開始したアニメ『スクールランブル』(テレビ東京系)のOPテーマで、ブラスロックバンド・UNSCANDALとコラボしたお祭り感のある賑やかな1曲だ。当時は声優が歌唱するアニソンのコラボ楽曲はそれほど馴染みがあったわけではなく、そういった面も楽曲の人気とともに大きな話題となった。昨今バンドとのコラボが当たり前となったアニソン業界にとって、堀江は先見の明があったとも言える。