ENHYPENが並外れた“美”と“没入力”を見せつけた210分「ツアー初日、埼玉でいいスタートが切れました」
作品の持つ物語を拡張する“並外れた没入力”
心臓がバクバクと脈打つVCRを挟み、メンバーは貴公子からB-BOYのルックへチェンジ。ガラッとテイストが変わった衣装を難なく着こなし、先ほどまでとは違うジャンルの楽曲も難なく乗りこなしていく。さすが「圧倒的コンセプト消化力のENHYPEN」。どんなテーマでも即座に対応できる柔軟さを持ち合わせているとは思っていたが、ライブを観ていく中で、もうひとつ特筆すべき点に気づいた。それは、7人が並外れた没入力を持っているということである。 パフォーマンス中に、メンバーが楽曲の世界観から落ちてしまう瞬間がまったくといっていいほどないのだ。どんなときでも作品にあった表情を選び、歌声を乗せ、情景を描く。世界観を維持し続ける没入力が、高いコンセプト消化能力と結びついているのだろう。「Attention, please!」でJAYがギターヒーローたる一面をのぞかせたかと思えば、「Tamed-Dashed [Japanese Ver.]」でHEESEUNGは笑顔を煌めかせる。それぞれの魅力を楽曲にかけ合わせ、作品の持つ物語を拡張していた。 前半の最後には、ふた組に分かれてユニットコーナーを展開。JAY、JAKE、SUNGHOON、SUNOOによる「TFW(That Feeling When)」では、JAYがアコースティックギターを優しく爪弾く。続くJUNGWON、HEESEUNG、NI-KIの3人は、HEESEUNGがピアノを奏でて「Just A Little Bit」をパフォーマンス。曲の最後には7人がそろい、ENGENE(ENHYPENのファンネーム)のスマートフォンのライトが輝くなか、丁寧にまっすぐに言葉を紡いでいた。
SUNOO「ENGENEのみなさんに片思いをしている」
『FATE』ではバスの形を模したトロッコに乗り、アリーナを外周したENHYPENだったが、なんと今回は客席降りが実現。「Polaroid Love」を歌いながら、通路を練り歩いていく。手の届く距離にメンバーがやってくるという予想していなかった演出に、思わずENGENEは大興奮。外周を巡る7人もうれしそうで、ファンとハイタッチしたり、一緒に手でハートを作ったり、楽しそうに交流していた。 音楽プロジェクト「Pokémon Music Collective」から生まれた「One and Only」では、6匹のピカチュウが応援に駆けつける。ピカチュウと一緒に歌い、ステップを踏み、たわむれている光景はピースフル。パフォーマンスが終わったあともJUNGWONはピカチュウの手を引き、フロントステージまで優しくエスコートをしていた。 ENGENEが楽しみにしているプチコーナー。この日、サプライズステージの主人公となったのはSUNOOだ。「僕がENGENEのみなさんに片思いをしているという意味で、うまく歌えるんじゃないかなと思った」という理由から、冨岡愛の「グッバイバイ」を選曲。スクリーンに映る映像もSUNOOが手作りし、ちょっとでも多くENGENEに想いを届けようと透き通った歌声を響かせる。メンバーも穏やかな視線で、その姿を見届けていた。